酸化ニオブとは
酸化ニオブ (英: Niobium oxide) とは、原子番号41、元素記号Nbの元素であるニオブの酸化物の総称です。
酸化数に応じて、複数の酸化物の形態が存在しますが、酸化数+2の酸化ニオブ(II) (NbO)や酸化数+5の酸化ニオブ(V) (Nb2O5) が一般的です。酸化ニオブ(II)は一酸化ニオブ、酸化ニオブ(V)は五酸化二ニオブと呼ばれる場合もあります。
酸化ニオブは、国内において、消防法や毒物および劇物取締法などの指定には該当しない物質です。
酸化ニオブの使用用途
酸化ニオブは産業分野において、ファインセラミックス、圧電材料などをはじめとして、さまざまな製品の材料に使用されます。酸化ニオブの特徴の1つは、「可視光域で高屈折率が得られる」という性質です。この特徴を活かし、主にコンパクトカメラや一眼カメラ用の高級レンズに添加され、製品の小型・軽量化に寄与しています。
また、酸化ニオブの薄膜は耐食性、耐酸性がある物質です。このため、自動車、建材用ガラス、ディスプレー用の低反射膜、半導体材料、光触媒材料、積層セラミックコンデンサ、バルブメタルの製造など、非常に幅広い用途で使用されます。
酸化ニオブの性質
1. 酸化ニオブ(II)の基本情報
図1. 酸化ニオブ(II)の基本情報
酸化ニオブ(II)は、式量108.9、融点1,937℃であり、常温での外観は黒色固体です。CAS登録番号は12034-57-0、密度は7.30g/mLです。水には不溶ですが、塩化水素にわずかに溶解します (ただし硝酸には不溶) 。不燃性であり、通常の保管環境においては安定な化合物です。金属の伝導性を有します。
2. 酸化ニオブ(V)の基本情報
図2. 酸化ニオブ(V)の基本情報
酸化ニオブ(V)は、式量265.81、融点1,512℃であり、常温での外観は白色粉末です。密度は4.60g/mLであり、水には溶けません。ふっ化水素酸を除いて鉱酸にも溶解しませんが、アルカリには溶けます。CAS登録番号は1313-96-8です。
酸化ニオブの種類
酸化ニオブは、主に研究開発用試薬製品や工業用ニオブ化合物として販売されています。酸化ニオブ(II)と酸化ニオブ(V)の両方が製品化されていますが、一般には主に酸化ニオブ(V)が用いられることが多いです。
1. 研究開発用試薬製品
現在酸化ニオブとして販売されている研究開発用試薬製品はほとんどが酸化ニオブ(V)であり、五酸化二ニオブと称されることも多いです。容量の種類は、5g、25g、50g、100g、500gなどとなっており、実験室で取り扱いやすい容量で提供されています。通常、室温で保管可能な試薬製品として扱われる物質です。少ないながらも、酸化ニオブ(II)も製品として流通はしています。
2. 工業用ニオブ化合物
工業用ニオブ化合物として販売されている酸化ニオブも、基本的には酸化ニオブ(V)です。圧電体や光学単結晶などのセラミック原料としての用途が想定されており、20kg (金属製ペール缶) などの比較的大きな容量単位で販売されています。
酸化ニオブのその他情報
1. 酸化ニオブの合成
図3. 酸化ニオブの合成
酸化ニオブ(V)は、塩化ニオブ(V)の加水分解反応によって合成可能です。また、酸化ニオブ(II)は、水素分子による酸化ニオブ(V)の還元や、均化などの方法で合成されます。
2. 酸化二オブの化学反応
酸化二オブ(V)の還元反応は、産業分野において単体のニオブを得るために汎用されます。具体的には、アルミニウムを用いる反応や、炭素を用いて炭化ニオブを中間体として経由する反応などがあります。
また、酸化ニオブ(V)を塩化チオニルと反応させることにより塩化ニオブ(V)を得ることが可能です。また、四塩化炭素CCl4との反応により、オキシ塩化ニオブNbOCl3が得られます。
参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0114-0533JGHEJP.pdf