次亜リン酸

次亜リン酸とは

次亜リン酸の互変異性体

図1. 次亜リン酸の互変異性体

次亜リン酸 (英: Hypophosphorous acid) とは、リンのオキソ酸の1種で、分子式H3PO2で表される無機酸です。

次亜リン酸とホスフィン酸 (英: Phosphinic acid) は互変異性体の関係にあるため、ホスフィン酸の名称で呼ばれる場合もあります。CAS登録番号は6303-21-5です。次亜リン酸は強力な腐食性を持つ化合物であり、目や皮膚と接触すると、失明や炎症を引き起こす可能性があります。

次亜リン酸の使用用途

次亜リン酸は還元力を持つ物質です。主な用途は「還元剤」「有機合成用触媒」「表面処理剤」「酸化防止剤」「熱変化防止剤」などです。無電解メッキの還元剤や、合成繊維やプラスチックの漂白剤及び脱色剤として、多く利用されています。

その他、ホスフィン酸塩の原料としての用途があります。例えば、次亜塩素酸ナトリウムなど、その他の次亜リン酸の調製に使用されており、これらは「分散剤」「乳化剤「湿潤帯電防止剤」として使われている物質です。また、触媒としては「エステル化触媒」「重合および重縮合触媒」など、の用途があります。

次亜リン酸の性質

次亜リン酸の基本情報

図2. 次亜リン酸の基本情報

次亜リン酸は、分子量66.00、融点26.5℃、沸点130℃であり、常温では無色透明の油性液体、または潮解性の結晶です。

密度は1.493g/mL、酸解離定数pKaは1.2です。水、アルコール、エーテルに溶解します。また、加熱すると、リン酸ホスフィンに分解されます。

次亜リン酸の種類

次亜リン酸は、工業用薬品や研究開発用試薬製品として一般に販売されています。

1. 工業用薬品

工業用薬品としては30%または50%溶液として販売されています。25kgのポリエチレン缶や200Lのドラムなどの容量での提供が一般的です。有機合成用触媒、還元剤、表面処理剤、酸化防止剤、熱変化防止剤をはじめとする、様々な用途を想定して提供されているため、複数メーカーからの販売があります。

2. 研究開発用試薬製品

次亜リン酸は、研究開発用試薬製品としても、30%もしくは50%溶液として販売されることが一般的です。容量の種類は25g、100g、500gなどがあります。通常、室温で保管可能な試薬製品として取り扱われています。

次亜リン酸のその他情報

1. 次亜リン酸の合成

次亜リン酸の合成

図3. 次亜リン酸の合成

次亜リン酸は、2段階反応によって合成されます。まず、リンをアルカリ性、またはアルカリ性の土質苛性溶液中で煮沸することで、次亜リン酸水溶液が生成します。この際、生成する亜リン酸塩はカルシウム塩として沈殿させ、除去することが可能です。

精製した水溶液を、酸化力のない強酸 (強硫酸など)  で処理すると、遊離の次亜リン酸を得ることができます。

2. 次亜リン酸の化学反応

前述の通り、次亜リン酸は互変異性化しますが、P=O結合を持つHP(O)(OH)2 構造の方が通常熱力学的に安定です。次亜リン酸は、還元力があるため、酸化クロム(III)を酸化クロム(II)に還元します。また、次亜リン酸を加熱すると約110℃で亜リン酸とホスフィンに分解します。

次亜リン酸は、推奨保管条件下で安定ですが、アルカリ性物質、金属類とは激しく反応します。危険有害な分解生成物は、リン酸化物です。保管の際は高温と直射日光、湿気を避けることが必要とされています。

3. 次亜リン酸の有害性と法規制情報

次亜リン酸は有害性として、以下の症状が指摘されています。

  • 金属腐食のおそれ
  • 重篤な皮膚の薬傷及び眼の損傷
  • 重篤な眼の損傷

消防法や労働安全衛生法、毒物及び劇物取締法では指定を受けていませんが、危険物船舶運送及び貯蔵規則や航空法では腐食性物質に指定されている物質です。取り扱いの際は、皮膚、 眼、 衣服との接触を避け、個人用保護具を着用するこ とが必要です。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0108-0176JGHEJP.pdf

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