次亜リン酸ナトリウム

次亜リン酸ナトリウムとは

次亜リン酸ナトリウムの構造

図1. 次亜リン酸ナトリウムの構造

次亜リン酸ナトリウム (英: Sodium hypophosphite) とは、化学式NaPO2H2で表される無機化合物です。

別名には、「ホスフィン酸ナトリウム」「次亜リン酸ソーダ」などの名称があります。CAS登録番号は、7681-53-0です。

製品としては主に一水和物などで販売されています。一水和物のCAS登録番号は10039-56-2です。

次亜リン酸ナトリウムの使用用途

次亜リン酸ナトリウムの主な使用用途は、「無電解メッキ用」「還元剤」「合成樹脂触媒」「医薬原料」などです。

1. 無電解メッキ

無電解メッキとは、酸化還元反応を利用しためっき方法です。外部からの電気を使用せずに、めっき液に含まれる還元剤の酸化によって放出される電子を用い、金属塩溶液から金属を対象物の表面に析出させます。

無電解ニッケルめっきには「次亜リン酸ナトリウム」「ホウ素化合物」「ヒドラジン化合物」を用いる3種類の方法がありますが、工業用では次亜リン酸ナトリウムを使う方法が一般的です。このようにめっき処理された製品は、耐食性・耐摩耗性が向上し硬度が増すため、半導体製造分野をはじめ、さまざまな場面で利用されています。

2. 合成分野

次亜リン酸ナトリウムは還元作用を持つため、化学合成などの分野において還元剤として用いられます。具体的な例としては、酢酸ニッケル四水和物からのニッケルナノ粒子 (NiNP) 合成における還元剤や触媒存在下でのケトン化合物の対応するアルコールへの還元 (エナンチオ選択的移動水素化) における水素供与体などが挙げられます。

次亜リン酸ナトリウムの性質

次亜リン酸ナトリウムは、無水物の分子量が87.98、一水和物の分子量が105.99です。一水和物の分解温度が240℃であり、常温での外観は白色の結晶性粉末 (一水和物) です。一水和物は、200℃で結晶水を失い、約240℃で分解します。

水溶液はほぼ中性で、水に溶けやすいです。その他、エタノールグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコールや、酢酸に溶解しやすい性質があります。吸湿性・潮解性があるので、保存には注意が必要です。密度は0.8g/mLです。

次亜リン酸ナトリウムの種類

次亜リン酸ナトリウムは、主に研究開発用試薬製品や、工業用薬品として販売されています。どちらの製品も、主に一水和物として製品化されています。

1. 研究開発用試薬製品

次亜リン酸ナトリウムは、研究開発用試薬製品としては、25g、100g、500gなどの容量の種類があります。実験室で取り扱いやすい容量での提供が一般的です。通常室温で保管可能な試薬製品として取り扱われます。

2. 工業用薬品

次亜リン酸ナトリウムは、工業用薬品としては25kgフレコンや500kgコンテナバッグなどの容量の種類があります。工場などで扱いやすい、大型容量からの提供が中心です。電解メッキ、還元剤、医薬原料などの用途を想定して商品化されています。

次亜リン酸ナトリウムのその他情報

1. 次亜リン酸ナトリウムの化学反応

亜リン酸 (左) とリン酸 (右) の構造

図2. 亜リン酸 (左) とリン酸 (右) の構造 (1)

次亜リン酸ナトリウムは、強い還元剤です。特にアルカリ性溶液では、還元性が強く、自身は、酸化されて亜リン酸、またはリン酸になります。

次亜リン酸ナトリウムと硝酸の化学反応 (上) と、次亜リン酸ナトリウムの熱分解 (下)

図3. 次亜リン酸ナトリウムと硝酸の化学反応 (上) / 次亜リン酸ナトリウムの熱分解 (下)

また、加熱すると分解してホスフィンと水素を発生し、硝酸と加熱すると、メタリン酸塩が生成します。

2. 次亜リン酸ナトリウムの取り扱い上の注意

次亜リン酸ナトリウムはGHS分類には該当せず、労働安全衛生法や消防法など各種法令による規制の対象にもなっていない物質です。ただし、取り扱いの際には、適切な局所排気装置や全体換気を設置し、保護メガネや保護衣などの適切な個人用保護具を用いることが大切です。

また、皮膚に付着した場合や眼に入った場合などは直ちに洗浄する必要があります。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0119-0223JGHEJP.pdf

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