尿酸とは
尿酸 (英: uric acid) とは、化学式C5H4N4O3 (分子量は168.11) で表される有機化合物です。
2,6,8-トリヒドロキシプリンとも呼ばれます。白色~わずかに薄い褐色の粉末で、水に溶けにくい物質です。鳥類や爬虫類、昆虫類では窒素代謝の最終産物として体外に排出され、ヒトでは核酸代謝の産物として少量が尿中に排出されます。尿酸は最初に、膀胱結石の中から見つかりました。尿酸のCAS番号は69-93-2です。危険有害性については、GHS分類基準に該当しない物質とされています。
尿酸の使用用途
尿酸は研究目的や医薬品用途で使用される物質です。
尿酸はもともと体内で産生される物質であり、血液中の尿酸の濃度 (尿酸値) は「高尿酸血症」の指標として用いられています。高尿酸血症は、体内で尿酸が腎臓から排泄されにくくなったり、尿酸が多く産生されたりすることでおきる病気です。プリン体 (動物性の食品に多く含まれる、プリン骨格を有する物質) を多く含む食品をたくさん摂取することも、病気の一因となります。
男性・女性ともに「尿酸値7.0ミリグラム/デシリットル超」が、高尿酸血症の基準です。一方、尿酸値が「2ミリグラム/デシリットル以下」の場合は一般に「低尿酸血症」と診断されます。低尿酸血症は、体内で尿酸が腎臓から排泄されやすくなったり、尿酸があまり産生されなくなったりすることで生じる病気です。
尿酸の性質
融点は300℃以上です。水酸化ナトリウム水溶液によく溶ける性質があります。一方、エタノールやエーテルには溶けません。尿酸の水溶液に硝酸を加えて蒸発乾固し、そこにアンモニア水を加えると赤紫色を呈する反応 (ムレキシド反応) は、尿酸の検出反応です。
尿酸が体内に蓄積すると、ナトリウムと結合して尿酸塩の結晶が作られます。尿酸塩の結晶を免疫細胞 (白血球) が攻撃することで、痛風発作がおきます。尿酸は活性酸素を取り除く「抗酸化作用」を有するとともに、状況によって「酸化促進作用」も有することが知られている物質です。
尿酸の種類
尿酸は様々な容量で市販されている物質です。
10グラム、25グラム、100グラム、500グラム、1キログラムなどの容量で販売されています。
尿酸のその他情報
1. 体内での産生経路
尿酸はリボース-5-リン酸を起点とし、キサンチンを経て、キサンチン脱水素酵素の働きによって生合成される物質です。
体内での産生経路は、外因性のものと内因性のものに分けられます。外因性の経路は、食事で摂取したプリン体を元に、尿酸を産生する経路です。およそ2~3割の尿酸が外因性の経路によって産生されます。内因性の経路は、細胞の代謝によって核酸 (DNAやRNAなど) やATPを分解することで、尿酸を産生する経路です。残り7~8割の尿酸が内因性の経路によって産生されます。人の体内で産生される尿酸の量は、一日あたり、およそ0.6グラムといわれています。
2. 痛風との関連
痛風は関節やその周囲に尿酸塩の結晶が析出する疾患です。多くの場合、繰り返し起きる関節炎 (急性または慢性) を伴います。関節炎によって、足の指の付け根や足の甲、膝、肘などの関節が侵されます。
尿酸が沈着することで生じる結節 (痛風結節) は、痛風の患者にみられる病変です。痛風結節が生じる主な部位は、手指、手足、肘頭などです。その他、腎臓や耳の皮下などにも生じることがあります。痛風の患者は合併症として、尿酸結石による尿路結石症を患うことがあります。
3. 動脈硬化との関連
尿酸との関連が示唆されているもう1つの疾患は、「動脈硬化」です。国内外の疫学研究により、高尿酸血症の患者では動脈硬化性疾患のリスクが高いことがわかっています。高尿酸血症の患者では動脈の血管壁に尿酸塩が沈着していることも、2020年以降、報告されるようになりました。
培養細胞を用いた研究からは、血管壁に尿酸塩が沈着すると、血管の細胞がダメージを受け、動脈硬化につながる可能性があることが示されています。
参考文献
https://www.tufu.or.jp/gout/gout2/59
https://www.jstage.jst.go.jp/article/gnam/41/2/41_233/_pdf/-char/ja
https://jsn.or.jp/journal/document/57_4/766-773.pdf