酸化ホウ素

酸化ホウ素とは

酸化ホウ素 (英: Boron trioxide ) とは、ホウ素と酸素を含む化合物です。

化学式がB2O2、B4O3、B4O5など数種類のものが報告されていますが、酸化ホウ素といった場合は一般には化学式B2O3のものを指します。別名、三酸化ホウ素、三酸化二ほう素、無水ホウ酸とも呼ばれます。

無色で結晶化しにくく、吸湿性があります。労働安全衛生法では、名称等を表示し、又は通知すべき危険物及び有害物 (名称表示危険/有害物) に該当します。化学物質管理促進法 (PRTR法) では、第1種指定化学物質に該当します。

酸化ホウ素の使用用途

酸化ホウ素は、試験管や光学ガラスなどの特殊なガラス製造時に融剤や洗浄器具として使われています。これは、酸化ホウ素を使用することで、融点の低下、耐熱性と機械的強度の向上、耐水性と耐薬品性の強化等の利点があるためです。

酸化ホウ素を少量の窒化ホウ素と組み合わせることで、セラミックス用の結合剤にもなります。酸化ホウ素は他にも、有機化合物の反応や合成時に触媒として使用されていたり、耐火レンガの製造にも使われています。

酸化ホウ素の性質

酸化ホウ素の分子量は69.62、CAS番号は1303-86-2です。融点は約450 ℃、沸点は約1860 ℃です。比重は、結晶は2.46、非結晶は1.8です。ホウ酸 (B(OH)3) を脱水することで得られます。ホウ酸 (オルトホウ酸) はホウ砂を硫酸で処理して得られます。ホウ砂は四ホウ酸ナトリウム (Na2B4O7) の10水和物です。

酸化ホウ素のその他情報

1. ガラス原料の酸化ホウ素

ボロシリケートガラス
酸化ホウ素と二酸化ケイ素を用いたガラスはボロシリケートガラスと呼ばれています。ケイ素と同様、ホウ素も酸素と結合しネットワークを形成します。ボロシリケートガラスで、アルカリ成分を含まず、アルミナ (Al2O3) を含むガラスは液晶パネルの基板ガラスに使用されます。

多孔質ガラス
多孔質ガラスの製造にも酸化ホウ素が用いられます。多孔質ガラスの作製では、SiO2-B2O3-Na2Oで構成される適切な組成のガラスに対して熱処理を行い、SiO2の相とB2O3-Na2Oの相に分離します。酸処理を行うことで、B2O3-Na2Oの相が溶出し、SiO2の骨格をもつ多孔質ガラスが得られます。多孔質ガラスを得るためには、適切な組成、適切な熱処理を行い、スピノーダル分解による分相が生じなければいけません。

2. ホウ素系非酸化物セラミックスの合成

ホウ素を含む非酸化物セラミックス粉末の合成法として、酸化ホウ素の熱炭素還元法があります。この方法を用いて、例えば、炭化ホウ素 (B4C) や窒化ホウ素 (BN) 、六ホウ化ランタン (LaB6) などが得られます。固相反応でかつ吸熱反応であることから、高温での反応が必要です。

3. 酸化ホウ素を含む鉱石

ホウ砂以外に、酸化ホウ素成分を含む鉱石は以下があります。それぞれ酸化ホウ素を含む割合が異なります。

  • カーン石 (Na2O・2B2O3・4H2O)
  • 曹灰ホウ石 (Na2O・2B2O3・10H2O)
  • 灰ホウ石 (コールマン石) (Na2O・2CaO・5B2O3・16H2O)
  • ホウ酸石 (B2O3・3H2O)
  • 方ホウ石 (5MgO・MgCl2・7B2O3)
  • バンデルマ石 (5CaO・6B2O3・6H2O)
  • ハイドロボロサイト (CaO・MgO・3B2O3・6H2O)
  • 小藤石 (3MgO・B2O3)
  • ダンブリ石 (CaO・B2O3)
  • サイベリー石 (5MgO・2B2O3・1.5H2O)
  • ルード・ビッヒ石 (3MgO・B2O3・FeO・Fe2O3)

これらの鉱石に対し塩酸を反応させて得たホウ酸を413 K以上に加熱することで、酸化ホウ素を得ることができます。酸化ホウ素に対してマグネシウムを加えて、約1273 Kで加熱することで、無定形ホウ素を得ることができます。より高純度の無定形ホウ素を得る場合は、炭素を活性剤として塩素と酸化ホウ素を反応させて塩化ホウ素 (BCl3) を得たのち、水素を流しながら1273 K以上に加熱します。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/1303-86-2.html

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