銅クロロフィルとは
銅クロロフィルとは、クロロフィル中のマグネシウムが銅で置換された化合物です。
別名として、銅葉緑素が挙げられます。銅クロロフィルは、水には難溶である一方で、油に可溶という性質を有します。
銅クロロフィルの元となるクロロフィルは、植物に含まれる天然の緑色色素です。クロロフィルによって植物の葉が緑色に見えています。しかし、クロロフィルをそのまま緑色の着色剤として使用すると、時間の経過とともに退色してしまいます。
クロロフィルの代わりに着色剤として用いられる物質が、銅クロロフィルです。銅クロロフィルは、天然のクロロフィルよりも酸や光に対する安定性が高まっているため、緑色を安定的に発色できます。
銅クロロフィルの使用用途
銅クロロフィルの使用用途は主に着色剤です。ただし、銅クロロフィルは水にほとんど溶けないため、着色剤としての用途が限定されます。
そこで、銅クロロフィルを加水分解することによって得られる水溶性の銅クロロフィリンナトリウムが、着色料として使用されています。銅クロロフィリンナトリウムは、食品や化粧品などの分野で使用されています。銅クロロフィルは、銅クロロフィリンナトリウムを得るための中間原料として使用される場合が多いです。
1. 食品分野における使用用途
銅クロロフィルは、緑色の着色剤として各種の食品に添加物として使用されますが、安全性の観点で使用基準が定められています。使用対象食品を列記すると以下の通りです。銅クロロフィリンナトリウムは下記の食品の他、あめ類にも使用できます。
- 昆布
- 野菜類や果実類の貯蔵品
- チューインガム
- 魚肉ねり製品
- 生菓子
- チョコレート
- みつ豆缶詰中の寒天
銅クロロフィルおよび銅クロロフィリンナトリウムの両方が、指定添加物の着色料として認可されています。銅クロロフィルや銅クロロフィリンナトリウムの配合上限は、食品の種類ごとに定められています。
配合量は、銅クロロフィルや銅クロロフィリンナトリウム自体の量で決められているのではなく、銅 (Cu) の量に換算した量で定められています。例えば、食品1kgあたり銅クロロフィルを1g配合した場合、銅で換算した配合量は1gよりも少なくなります。
2. 食品以外の分野における使用用途
銅クロロフィルは、緑色に着色させる目的で化粧品、医薬部外品、医薬品などに添加されます。化粧品および医薬部外品では、例えば、クレンジング製品、シャンプー製品、洗顔石鹸、歯磨き剤といった洗浄系の製品に配合されています。特定の医薬部外品 (薬用化粧品) では、以下の通り配合上限が定められています。
- 薬用口唇類 (0.050%)
- 薬用歯みがき類 (0.050%)
銅クロロフィルの性質
銅クロロフィルの主な性質として、長期間にわたって緑色を発色できる点が挙げられます。銅クロロフィルは、分子の中心にある銅 (Cu) が分子外へ離脱しにくいため、天然にあるクロロフィルよりも退色が抑えられています。
換言すると、天然のクロロフィルの分子中心にあるマグネシウム (Mg) は銅 (Cu) よりも離脱しやすいことから、天然のクロロフィルは比較的短時間で退色します。つまり、マグネシウム (Mg) と銅 (Cu) を比べると、銅 (Cu) の方がクロロフィルのテトラピロール環の中に安定して存在可能です。
このような理由により、天然のクロロフィル中にあるマグネシウム (Mg) が銅 (Cu) に置き換えられて銅クロロフィルになると、安定的に緑色を発色できるようになります。よって、緑色を安定的に発色するという効果が発揮されます。
銅クロロフィルの構造
銅クロロフィルの分子構造は、クロロフィル (葉緑素) と類似しています。クロロフィルは、テトラピロール環という環状構造と、疎水性の長鎖アルキル構造を有します。テトラピロール環の中心にあるマグネシウム (Mg) が銅 (Cu) に置き換わった物質が銅クロロフィルです。
銅クロロフィルは疎水性の長鎖アルキル構造を有するため、水に溶解しにくい油溶性です。油溶性の銅クロロフィルが加水分解されると水溶性になります。すなわち、銅クロロフィルの分子内にある長鎖アルキル構造が加水分解によって外れると、水溶性のクロロフィリン構造へと変化します。
クロロフィリン構造が塩となった銅クロロフィリンナトリウムは、さらに水に溶解しやすい性質を有します。
銅クロロフィルのその他情報
クロロフィルの種類
クロロフィルには複数の種類があります。植物および藻類に一般的に含まれているクロロフィルa、植物のみに含まれているクロロフィルb、藻類のみに含まれているクロロフィルc1、c2などが代表的です。
参考文献
https://www.pref.aichi.jp/eiseiken/gijyutu/19941804.pdf