ラノリンアルコールとは
ラノリンアルコール (英: Lanolin Alcohol) とは、羊毛から採取できる油脂を精製した高級アルコールとステロールの混合物です。
ラノリンを加水分解することで得られる天然アルコールをラノリンアルコールと呼びます。別名として、ウールアルコール (英: Wool alcohol) やウールワックスアルコール (英: Wool wax alcohol) があります。
ラノリンアルコールの使用用途
1. 化粧品添加剤
ラノリンアルコールは、エモリエント効果を期待され、または乳化安定剤として、化粧品に添加されます。エモリエント効果とは、肌表面から水分が蒸発することを防ぎ、潤いを保って肌を柔らかくする効果のことです。ラノリンアルコールの他に、天然油脂や脂肪酸エステルなど疎水性の脂質成分が、主なエモリエント剤として知られています。
エモリエント効果を持つ成分の中でも、ラノリンアルコールは抱水性に優れます。疎水性でありながら水分を保持できるため、保湿性に優れた成分です。ラノリンアルコールは、30%以上のコレステロールを含み、分岐鎖アルコールを多く含むため、皮膚馴染みのよいクリームに仕上がります。
乳化性、およびエモリエント効果に優れたラノリンアルコールを化粧品に添加することで、べたつかずにさらっとした、キメの細かいテクスチャーが得られます。また、ラノリンアルコールを添加することで乳化が促進され、より流動性の高い液体にすることが可能です。
天然アルコールであるラノリンアルコールは、皮膚刺激性や眼刺激性をほとんど持たず、安全に使用できます。シャンプーやボディークリーム、ボディーソープ、スキンケア用品など、様々な化粧品の添加剤として用いられています。
2. 医薬品添加剤
ラノリンアルコールは、主に基剤や分散剤として、外用薬や舌下適用薬に添加されます。
ラノリンアルコールの性質
ラノリンアルコールのCAS番号は、8027-33-6で登録されています。淡黄色~黄褐色のロウ状または軟膏状物質で、融点45〜75℃の吸水性を持つ液体です。わずかに特異臭を持ち、味はありません。エタノールには容易に溶けますが、水には不溶です。
ラノリンアルコールは、直鎖アルコールやイソアルコール、アンテイソアルコールなどの脂肪族アルコール、コレステロールなどのステロール、ラノステロールやジヒドロラノステロールなどのトリテルペンアルコールの混合物です。脂肪族アルコール中では、分岐鎖アルコールが大部分を占めます。
乾燥させると、30%以上のコレステロールが含まれます。ラノリンアルコールは消防法などの国内法規に指定されていません。最大使用量は、一般外用剤では200mg/g、舌下適用では3.5mgとされています。
ラノリンアルコールの種類
ラノリンアルコールは、複数種類のアルコール混合物です。組成の異なるラノリンアルコールが各社で製造されており、「ラノリンアルコールA」や「ラノリンアルコールCSY」などの名称によって区別されています。
ラノリンアルコールのその他情報
1. ラノリンアルコールの製造方法
羊毛を特殊な界面活性剤の存在下、熱水で洗浄し、遠心分離することでラノリンが抽出できます。その後、得られたラノリンを加水分解することでラノリンアルコールが得られます。
2. 取り扱い及び保管上の注意
皮膚炎がある場合、ラノリンアルコールを含む化粧品の塗布により炎症が悪化する可能性があります。ラノリンアルコールは、日本皮膚免疫アレルギー学会が選定するジャパニーズスタンダードアレルゲンの1つです。稀ですが、過敏反応やアレルギー反応を引き起こす恐れがあります。
ラノリンアルコールを含む化粧品または外用薬を使用していて炎症が表れた場合は、医師または薬剤師に相談してください。ジャパニーズスタンダードアレルゲンとは、日本人にアレルギー反応が起こる確率が高い原因物質のことです。
ラノリンアルコールの他に、硫酸ニッケルやエポキシ樹脂、ロジン、ウルシオールなど24種類の物質が指定されています。専門機関などで、アレルギーの有無を調べるために、パッチテストを行うことができます。
参考文献
https://cosmetic-ingredients.org/emulsion-stabilizer/1415/
https://www.jcia.org/user/public/knowledge/glossary/moisturizing
https://www.jscia.org/jpn_std_allergen2015.html
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000336088.pdf