監修:株式会社CJVインターナショナル
特殊工具とは
特殊工具とは、市販されている汎用切削工具と比べて材質や性能が特殊なものです。
汎用工具では難しい、複雑な形状や寸法を持つ部品を加工するために使用されます。これらの工具は、特定の用途や環境条件に適した材質や形状を専用設計で作られており、高い効率や精度を提供することが期待されています。それぞれの材料や用途に適した特性を持っており、高い耐摩耗性、耐熱性、寿命、精度などを提供します。したがって、特殊な工具は、特定の工作物や条件に合わせて設計製造され、高品質な加工を実現するために重要です。
特殊工具の使用用途
以下は、特殊工具の一般的な使用用途の例です
- ステンレス鋼、ハードアルミニウム合金、超硬合金などの硬い金属の加工
- セラミックス、ガラス、宝石などの金属以外の硬い材料の加工
- その他硬質材料の研削や穴あけ
- 超精密加工や高速切削
- CNC旋盤およびフライス加工
- 精密な光学部品や半導体デバイスの製造
- 金属部品の形状加工および穴あけ
- 複雑な形状や溝の加工
- 高温状態での金属切削
- 一般的な金属加工、特に一般的な鋼材の切削、穴あけ、フライス加工
- 機械部品や工具の製造
- 自動化ラインなどで、省力化を図るために、工具の交換頻度を下げたい場合
また、航空宇宙、自動車産業、医療機器製造、宝石加工、精密機械製造など、様々な産業において特殊工具が使用されています。
特殊工具の原理
切削工具の原理は、硬い材料を柔らかい材料に触れされ、どちらかの材料に力を加えて動かすと、柔らかい材料の表面が剥離するという原理に基づいています。したがって、切削工具の材質は切削対象となる材料よりも固い材料を用いるのが原則です。
近年、切削対象となる材料の硬度が上がっており、工具の材料もそれに伴って硬度が上がる傾向にあります。そして、切削対象となる材料の多様化や、切削目的の多様化に伴って、切削工具の種類も様々なものがあります。主な材質だけでも、超硬合金、高速度工具鋼 (HSS) 、ダイヤモンド、PCD (ポリクリスタルラインダイヤモンド) / CBN (立方晶窒化ホウ素) 、セラミック、サーメットなどがあります。これに工具の大きさ、形状、使用目的などを考えると、極めて多様な種類があります。
特殊工具の製造方法は、その工具のタイプ、用途、および設計によって異なりますが、一般的には超硬合金や工具鋼を基材に材質選定と形状選定を行います。サイズに合わせて、ソリッド (工具全体が高硬度材料) や刃先部だけを高硬度材料して製造されます。オプションでダイヤモンドやCBN などさらに高度が高い材料を貼り付けたり、コーティングを施したりします。コーティングもTin (チタン系) 、TiALN (チタンアルミナ系) 、AlCrN (アルミクロム系) 、DLC (ダイヤモンドライクカーボン) など様々な種類があります。
特殊工具の製造は高度な技術と品質管理が必要なプロセスであり、様々な工具メーカーが顧客の要求に合わせてカスタマイズされた工具を提供しています。また、製造プロセスは継続的に改良れ、効率性と品質を向上させるための新しいテクノロジーが導入されています。
特殊工具の種類
以下は、特殊工具の主な種類です。
これらの特殊な材質の切削工具は、それぞれの材質や特性に基づいて異なる原理に従って動作し、高い効率と耐久性を提供します。切削工具の原理を理解し、適切に選択および使用することは、高品質・高能率な加工作業の鍵となります。下記の材質の1つかその組み合わせで、ドリル・リーマー・エンドミル・フライスカッター・サイドカッター・メタルソー・カウンターシンク・Tスローカッター・トレパニングツール・リセッシングツール・ボーリングツール・タップ・ダイス・ホブ・ブローチ・パンチ・バイトなど様々な形状があります。
1. 超硬合金切削工具
超硬合金は、硬質の金属炭化物と鉄系金属で構成される合金のことを言います。超硬合金の代表的な組成は、レアメタルと呼ばれるWC (タングステンカーバイド) とCo (コバルト) の粉末を混ぜ合わせ約 1,400°Cの高温で焼結することにより製造されます。
高速度工具鋼などの工具鋼に比べて、硬度、弾性係数、圧縮強度、熱伝導率、比重が高く、熱膨張率が小さい特徴を有します。その特性から寿命が長く、工具交換を頻繁に行わなくても切れ味を保ちます。刃先が摩耗しづらく、高温状態でも安定した性能を提供します。それまで主流であった高速度工具鋼 (HSS) に置き換わる形で一般的な工具材質となっています。
2. ダイヤモンド切削工具
非常に硬い天然ダイヤモンドや人工ダイヤモンドを素材として、刃先にダイヤモンド粒子やダイヤモンド焼結体を取り付けたダイヤモンド切削工具は、超硬合金などの高硬度材を切削するためにも使用されます。ダイヤモンドは摩耗に対して非常に耐性があり、高熱伝導性があるため、高温での作業にも適しています。アルミニウムの加工はもちろんのこと、セラミックス、ガラス、宝石などの硬い材料の切削、研削、穴あけに用いられます。
3. セラミック切削工具
セラミック材料は高温に耐え、高硬度を持つため、高温下での切削作業に適しています。セラミック切削工具は、熱的に安定した性能を提供します。欠点としては脆く、切削中に欠けてしまうことがありましたが、近年では大分改善されています。主に高温下 (ドライ・セミドライ加工) での金属切削、超硬質材料の加工、超精密加工に使用されます。
4. 鋼材切削工具
高速度工具鋼 (HSS) などの鋼は通常、特定の鋼の合金化や熱処理によって硬度と耐摩耗性を向上させます。鋼の切削工具は、通常の金属切削原理に従いますが、特定の鋼の特性を利用します。超硬合金に比べて衝撃強度や破壊靭性は HSSの方が高く、HSS工具にコーティングを施すことにより、特定の加工においては超硬工具を凌ぐ性能を発揮します。
これらは一般的な特殊切削工具の一部であり、それぞれの工具は異なる用途や材料に最適化されています。選択する切削工具は、加工対象の材料、加工プロセス、所望の精度、および作業条件に応じて選ばれます。特殊な材質の切削工具は、高い耐摩耗性、耐熱性、硬度などの特性を持っており、特別な加工ニーズに対応するために設計されています。
本記事は特殊工具を製造・販売する株式会社CJVインターナショナル様に監修を頂きました。
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