フッ化バリウム

フッ化バリウムとは

フッ化バリウムとは、フッ化物イオンとバリウムイオンからなるイオン化合物で、組成式BaF2で表される物質です。

CAS登録番号は、7787-32-8であり、常温常圧で白色の粉末状個体です。フッ化物結晶は共通して赤外線を透過する性質がありますが、フッ化バリウムはその中でも特に広い範囲の波長を透過します。

そのため、赤外線に対応したレンズやガラスなどの材料としても利用されています。フッ化バリウムは労働基準法で疾病化学物質に、毒物及び劇物取締法で劇物に指定されています。

フッ化バリウムの使用用途

フッ化バリウムの主な使用用途は、 高純度アルミニウム製錬用、溶接棒用フラックス、釉薬などです。フッ化バリウムは、紫外線から赤外線まで (波長約0.15~14μm) 非常に広範囲の電磁波を透過します。

そのため、幅広い波長に対応したレンズやプリズムに用いられたり、赤外分光法における窓板や、X線検出におけるシンチレーターなどの用途もあります。その他、光学分野の用途としては、デジタル一眼レフカメラ向け光学用フッ化物レンズ原料、光ファイバー母材、NDIRガス計測用セル窓、放射温度計や赤外線カメラなどの温度測定用の観察窓、中赤外カメラレンズの保護窓などがあります。

フッ化バリウムは、フッ化物結晶の中で最も広範囲の波長を透過する物質です。また、フッ化カルシウムなどと比べて高エネルギー電磁波への耐久性に優れています。

フッ化バリウムの性質

フッ化バリウムの基本情報

図1. フッ化バリウムの基本情報

フッ化バリウムは、式量175.324、融点1,253℃、沸点2,260℃であり、常温では無臭の白色固体です。密度は4.893g/mL、水への溶解度は1.58 g/L (10 °C)であり、水にはほぼ不溶です。

通常の取り扱い条件下では安定ですが、急激な加熱や衝撃に弱い性質があります。直射日光を避け、冷暗所に保管することが推奨されています。

混触危険物質は、酸化剤、還元剤です。不燃性の物質ですが、火災等の場合は、毒性の強いフッ化水素ガスなどの分解生成物が発生する可能性があるため、注意が必要です。

フッ化バリウムの種類

フッ化バリウムは、主に研究開発用試薬製品や、工業用原料物質などとして販売されています。研究開発用試薬製品としては、20g、50g、100g、500gなどの容量で販売されており、実験室で取り扱いやすい容量での提供です。通常、室温で保管可能な試薬製品として取り扱われます。

また、工業用原料としては、主にガラス (レンズ) 製造を用途として販売されています。容量は20kg (袋) からの提供が中心で、工場などで取り扱いやすい容量での提供です。

フッ化バリウムのその他情報

1. 自然界におけるフッ化バリウム

フッ化バリウムは、自然界ではフランクディクソナイトという鉱物の形で産出されます。ネバダ州ユーレカ郡のカーリン金鉱床で、水晶と共に産出される物質です。

2. フッ化バリウムの結晶構造

フッ化バリウムの結晶構造

図2. フッ化バリウムの結晶構造 (常温常圧下)

フッ化バリウムは、常温常圧下ではCaF2と同様の構造を取りますが、高圧下ではPbCl2と同様の構造へと変化します。

3.  フッ化バリウムの安全性・有害性情報

フッ化バリウムの有害性

図3. フッ化バリウムの有害性

フッ化バリウムは下記のような危険性が指摘されている物質です。

  • 経口摂取による有毒性
  • 強い眼刺激
  • 呼吸器への刺激の危険性
  • 長期又は反復ばく露によって心血管系、神経系、筋肉系、腎臓、骨の障害を起こす危険性

これらの有害性のため、各種法令によって規制されている物質です。毒物及び劇物取締法では劇物に指定されており、労働基準法では、疾病化学物質に指定されています。

水道法 (有害物質) 、下水道法 (水質基準物質) 、土壌汚染対策法 (特定有害物質) 、水質汚濁防止法 (有害物質) でもそれぞれ指定を受けており、廃棄の際には注意が必要な物質です。フッ化バリウム自体は不燃性の物質ですが、燃焼によってフッ化水素ガスが発生する可能性があるため、消防法では、貯蔵等の届出を要する物質に指定されています。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/7787-32-8.html

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