トロポロン

トロポロンとは

トロポロンの基本情報

図1. トロポロンの基本情報

トロポロンとは、トロポン (英: tropone) の2位がヒドロキシ基に置換された芳香族有機化合物です。

トロポンは2,4,6-シクロヘプタトリエン-1-オン (英: 2,4,6-cycloheptatrien-1-one) とも呼ばれます。トロポンは3つの共役アルケンとカルボニル基を有する、炭素原子7個からなる環で構成される非ベンゼノイド芳香族です。

そして、トロポロンはヒドロキシトロポンや2-ヒドロキシ-2,4,6-シクロヘプタトリエン-1-オンとも呼ばれ、カルボニル基の隣にヒドロキシ基を持っています。なお、労働基準法やPRTR法などの国内法規による指定はありません。

トロポロンの使用用途

トロポロンの誘導体として得られるヒノキチオールは、タイワンヒノキや青森ヒバなどのヒノキ科の樹木の精油に含まれています。ヒノキチオールは、大腸菌や黄色ブドウ球菌など幅広い種類の細菌に対して抗菌性を示します。そのため、スキンケア製品やクレンジング製品などに防腐剤として添加可能です。

また、フケが発生する原因となる細菌であるマラセチア菌の生育を、ヒノキチオールが阻害する効果を持つことも報告されています。したがって、シャンプーや頭皮ケア製品に、フケ防止成分として配合されています。

トロポロンの性質

トロポロンの融点は50〜52°C、沸点は290°Cであり、引火点は112°Cです。常温常圧で淡黄色の固体です。

有機溶媒に溶けやすく、エーテル、エタノール、ベンゼンなどに溶解します。酸素原子を2個持っているため、さまざまな金属と反応して、キレート塩を形成可能です。

トロポロンの水酸基は弱酸性であり、フェノールと似た性質を示します。酸解離定数 (pKa) は6.89です。塩化鉄により深緑色の呈色反応を示します。

トロポロンの構造

トロポロンの構造

図2. トロポロンの構造

トロポロンの化学式はC7H6O2と表されます。モル質量は122.12g/mol、密度は1.1483g/mLです。

α‐トロポロン、β‐トロポロン、γ‐トロポロンの3異性体が存在し、通常はα‐トロポロンのことを指します。7員環構造ですが、芳香族性を有します。酸素原子に負電荷が偏るため、環部分が6π電子系になるためです。

トロポロンのヒドロキシ基とカルボニル基は区別できず、トロポロン核は共鳴構造の混成によって安定化されています。トロポロンの限界構造式は6種類考えられるため、ヒドロキシ基とカルボニル基の性質はほぼ同じです。

ヒノキチオール、コルヒチン、プルプロガリンなど、トロポロンを骨格として持つ天然化合物も存在します。スチピタチン酸は、特異な抗菌性を示します。

トロポロンのその他情報

1. トロポロンの合成法

トロポロンの合成

図3. トロポロンの合成

トロポロンの合成法は複数あります。例えば、N-ブロモスクシンイミドを用いて、1,2-シクロヘプタンジオンを臭素化し、高温で脱ハロゲン化水素すると得られます。

また、ピメリン酸ジエチルのアシロイン縮合 (英: acyloin condensation) の後、臭素を用いたアシロインの酸化によっても合成可能です。

さらに、シクロペンタジエンとケテンの[2+2]付加環化によって、ビシクロ[3.2.0]ヘプチルが生じ、加水分解と単環の生成によってトロポロンが得られます。

2. トロポロンの反応

トロポロンは容易にO-アルキル化して、シクロヘプタトリエニル誘導体を生成します。このシクロヘプタトリエニル誘導体は、幅広い用途を持つ合成中間体です。

スルファミン酸、硝酸、臭素によって、トロポロンは親電子置換を受けて、スルホン酸、ニトロ化合物、ブロモ化合物を生成可能です。ジアゾニウム塩では、ジアゾカップリングを起こします。

金属陽イオンによって脱プロトン化されて、Cu(O2C7H5)2錯体のように、二座配位子を形成します。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0120-1133JGHEJP.pdf

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