ソルビタンとは
ソルビタン(Sorbitan)は、分子式C6H12O5で表される有機化合物で、分子量は164.16です。別名、1,4-ソルビタンとも呼ばれます。室温で固体です。
ソルビトール(Sorbitol)が分子内で脱水環化したもので、工業品は1,4-ソルビタン(五員環状エーテル)と1,5-ソルビタン(六員環状エーテル)の混合物です。
水分1.5%以下のソルビタンは淡黄色粘性物(白色固体物の析出あり)で、pH = 4~7です。
ソルビタンの使用用途
ソルビタンは主に、ソルビタン脂肪酸エステルの原料として使用されます。1,4-ソルビタンの五員環に結合しているCH(OH)-CH2OHの末端水酸基、そして1,5-ソルビタンのの六員環に結合しているCH2OHの水酸基は、脂肪酸と反応させると脱水してエステルとなります。ラウリン酸やオレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸などの脂肪酸が主に使用され、様々なソルビタン脂肪酸エステルが知られています。
ソルビタン脂肪酸エステルはノニオン系界面活性剤の一種です。界面活性剤とは、一つの分子の中に「水になじみやすい親水基」と「油になじみやすい疎水基(親油基)」の両方を有する構造をしています。ソルビタン脂肪酸エステルの場合、ソルビタン部分が親水基、脂肪酸エステル部分が疎水基として働きますが、ソルビタンは水中でイオン化しないことから、界面活性剤の中でもノニオン系に分類されます。
乳化剤や化粧品、展着剤(農薬や緑化資材や除草剤 を散布する際、散布対象への付着を容易にするため、媒介的に用いられる薬剤のこと)や工業用界面活性剤などとして広く使用され、単独または他の界面活性剤と組み合わせて用いられます。その他、殺虫殺菌剤としても知られています。
また、ソルビタン脂肪酸エステルをポリオキシエチレンエーテルと反応させるとポリソルベートが得られます。こちらもノニオン系界面活性剤の一種として知られており、食品用乳化剤や洗口剤などの可溶化剤、化粧水などのスキンケア用乳化剤があります。ポリオキシエチレンエーテルが導入されることにより、ポリソルベートはソルビタン脂肪酸エステルよりも親水性が向上するという特徴があります。
ソルビタンのその他情報
1. ソルビタンの製造法
ソルビタンは、ソルビトール(Sorbitol)を固体の酸触媒(例えばゼオライト)存在下で処理することによって分子内で一分子脱水して生成します。更に、ソルビタンの分子内脱水が進行するとイソソルバイド(Isosorbide)に変換されます。ソルビトールは、グルコース(Glucose)を還元し、末端のアルデヒ基をヒドロキシル基に変換して得られる糖アルコールの一種です。ソルビタンは、ソルビトールを脱水して1,4-ソルビタンと1,5-ソルビタンの混合物として得られますが、1,4-ソルビタンが主です。分子内脱水の反応条件を緻密にコントロールすることでイソソルバイドまで行かず、ソルビタンを選択的に製造することが可能です。
2. ソルビタン界面活性剤の製造法
ソルビタンから誘導されるソルビタン脂肪酸エステルは一般的に、酸またはアルカリ触媒存在下、ソルビタンと脂肪酸を直接エステル化する方法で製造されています。あるいは、リパーゼを用いて、ソルビタンと脂肪酸をエステル化する方法も知られています。
また、ポリソルベートは、ソルビタン脂肪酸エステルに少量のアルカリ触媒を添加し、エチレンオキサイド(EO)を付加重合させることによって得られます。エチレンオキサイドの付加重合モル数によって界面活性剤の諸性質(親/疎水性のバランスなど)が変化します。
3. ソルビタンの取り扱い・保管
密栓し、直射日光を避け通気のよい場所に保管しましょう。火気厳禁です。品質を損う恐れがある為に、高温・局所加熱は避けるよう注意しましょう。皮膚についた場合、多量の水と石鹸でよく洗いましょう。
参考文献