酢酸イソブチル

酢酸イソブチルとは

酢酸イソブチルの構造

図1. 酢酸イソブチルの構造

酢酸イソブチル (英: Isobutyl acetate) とは、カルボン酸エステルに分類され、化学式C6H12O2で表される有機化合物の1種です。

IUPAC命名法による名称は酢酸 2-メチルプロピルであり、その他の別名に、酢酸2-メチルプロピルエステル、ブチルエタノエートという名称があります。CAS登録番号は110-19-0です。

カルボン酸エステル特有の果実臭を特徴としており、バナナの香りの主成分であるとされています。

酢酸イソブチルの使用用途

酢酸イソブチルとフェニル酢酸イソブチルの構造

図2. 酢酸イソブチルとフェニル酢酸イソブチルの構造

酢酸イソブチルは、主に化学工業において、脱水剤、塗料 (アクリルポリウレタンなど) ・インキ用溶剤、接着剤、反応溶媒、抽出溶剤、化学繊維製造凝固剤、メッキ、蛍光体原料などの幅広い用途を持つ物質です。酢酸イソブチルは、エステル類特有の果実臭を持つため、香水や食品添加物としても用いられます。

なお、関連物質であるα位がフェニル基で置き換わったフェニル酢酸イソブチルは、バラの香りの香料として、食品衛生法で食品添加物に指定されている物質です。それ以外の酢酸イソブチルの用途としては、農薬 (殺菌剤) 、農薬原料、医薬、飼料添加物などの用途が挙げられます。

酢酸イソブチルの性質

酢酸イソブチルは分子量116.16、融点-98.8℃、沸点116.5℃であり、常温での外観は無色澄明の液体です。臭いは特異臭と形容される果実臭です。自然界ではラズベリーやバナナ、梨の香気成分に含まれています。

密度は0.873g/mLです。エタノール及びアセトン等の有機溶媒に極めて溶けやすく、水には溶けにくい性質があります。水への溶解度は0.67g/100mL (20℃) です。引火点は18℃であり、引火性の高い物質といえます。

酢酸イソブチルの種類

酢酸イソブチルは、主に研究開発用試薬製品や、工業用化学薬品として販売されている物質です。

1. 研究開発用試薬製品

研究開発用試薬製品としては、酢酸イソブチルは25mL、500mLなどの容量で販売されています。実験室で取り扱いやすい容量での提供が一般的です。通常、室温で取り扱い可能な試薬製品として販売されています。

2. 工業用化学薬品

工業用化学薬品としては、酢酸イソブチルは15kg石油缶や180kgドラムなど、産業用の大型容量で販売されている物質です。主に工業用溶剤として用いられることが多いです。

酢酸イソブチルのその他情報

1. 酢酸イソブチルの合成

酢酸イソブチルの合成

図3. 酢酸イソブチルの合成

酢酸イソブチルは、酢酸とイソブチルアルコールが縮合したカルボン酸エステルに相当します。合成方法としては、他のエステルと同様に、濃硫酸などの酸触媒や脱水剤の存在下、酢酸とイソブチルアルコールを混合、加熱する方法 (フィッシャーエステル合成反応) や、酢酸ハライドや無水酢酸を用いる方法などが挙げられます。

工業的には、イソブチルアルコールを酢酸で直接エステル化することにより製造されます。

2. 酢酸イソブチルの有害性

酢酸イソブチルは物理化学的危険性や人体への有害性が指摘されている物質です。GHS分類では、下記のように分類されています。

取り扱いの際は適切な局所排気装置や全体換気を設置し、保護メガネや保護衣などの適切な個人用保護具を着用することが必要です。

  • 引火性液体: 区分2
  • 健康に対する有害性 急性毒性 (吸入: 蒸気) : 区分4
  • 眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性 : 区分2B
  • 特定標的臓器毒性 (単回ばく露) : 区分3 (気道刺激性、麻酔作用)

3. 酢酸イソブチルの法規制情報

酢酸イソブチルは、前述の有害性のため、法令によって規制を受ける物質です。労働安全衛生法では、危険物・引火性の物、名称等を表示すべき危険有害物、名称等を通知すべき危険有害物、リスクアセスメントを実施すべき危険有害物、第2種有機溶剤等、作業環境評価基準に指定されています。

消防法においては、第4類引火性液体、第一石油類非水溶性液体に分類されている物質です。法令を遵守して正しく取り扱うことが必要といえます。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0102-0646JGHEJP.pdf

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