酢酸イソアミル

酢酸イソアミルとは

酢酸イソアミルの構造

図1. 酢酸イソアミルの構造

酢酸イソアミル (英: Isoamyl acetate) とは、カルボン酸エステルに分類され、化学式C7H14O2で表される有機化合物の1種です。

IUPAC命名法による名称は酢酸3-メチルブチルであり、その他の別名に酢酸イソペンチルという名称があります。CAS登録番号は123-92-2です。カルボン酸エステル特有の果実臭を特徴として、特にバナナエッセンスなどの香料に用いられています。

酢酸イソアミルの使用用途

酢酸イソアミルの主な使用用途は、 香味料、香料、有機溶媒、溶剤です。

1. 香料

酢酸イソアミルは、バナナの香りの主成分であり、非常にフルーティーな香りの液体です。香料としては、バナナのフレーバー他、食品用の香料として使用されています。

また、日本酒の吟醸香の香気成分の1つでもあり、吟醸酒系の酒類が放つフルーティーな香りは酢酸イソアミル由来の香りです。

2. 溶剤・抽出剤

香料以外の用途では、酢酸イソアミルは、ニトロセルロース、エチルセルロース、樹脂の溶剤としてや塗料溶剤、印刷溶剤、シンナー、鉄・ニッケル等の抽出剤などにも使用されています。

酢酸イソアミルの性質

酢酸イソアミルの分子量は130.18、融点は-78.5℃、沸点は142℃であり、常温での外観は無色透明の液体です。揮発性の物質であり、臭いはバナナやメロンに似た果実臭と形容されます。

エタノール等のアルコールや、エーテル、酢酸エチルなどの有機溶媒には溶けますが、水には溶けにくい性質を示します。水への溶解度は、2.00×10-3mg/L (25℃) 、密度は0.86g/mLです。また、引火性が有り、引火点は23℃です。

酢酸イソアミルの種類

酢酸イソアミルは、主に研究開発用試薬製品や工業用化学薬品として販売されています。

1. 研究開発用試薬製品

酢酸イソアミル-d3の構造

図2. 酢酸イソアミル-d3の構造

研究開発用試薬製品としては、500mgや500mLなどの容量の種類が有ります。実験室で取り扱いやすい容量での提供です。通常、室温で取り扱い可能な試薬製品として提供されています。

また、研究開発用試薬製品としては、通常の酢酸イソアミルの他に、重溶媒酢酸イソアミル-d3  (CH3)2CHCH2CH2OCOCD3) も販売されています。こちらはNMR分析用溶媒などに使用されます。

2. 工業用化学薬品

工業用化学薬品としては、15kg石油缶、180kgドラム、1,000Lコンテナなどの荷姿で提供されている物質です。溶剤、抽出剤などの用途が想定されています。

酢酸イソアミルのその他情報

1. 酢酸イソアミルの合成

酢酸イソアミルの合成

図3. 酢酸イソアミルの合成

酢酸イソアミルは、酢酸とイソアミルアルコールが縮合したカルボン酸エステルに相当します。合成方法としては、他のエステルと同様に、濃硫酸などの酸触媒や脱水剤の存在下、酢酸とイソアミルアルコールを混合、加熱する方法 (フィッシャーエステル合成反応) や、酢酸ハライドや無水酢酸を用いる方法などが挙げられます。

2. 酢酸イソアミルの有害性情報

酢酸イソアミルは、物理化学的危険性や人体への有害性が指摘されている物質です。GHS分類では、下記のように分類されています。

  • 引火性液体 区分3
  • 皮膚腐食性・刺激性: 区分3
  • 眼に対する重篤な損傷・眼刺激性: 区分2B
  • 特定標的臓器・全身毒性 (単回ばく露) : 区分3 (気道刺激性、麻酔作用)

取り扱いの際は適切な局所排気装置や全体換気を設置し、保護メガネや保護衣などの適切な個人用保護具を着用することが必要です。

3. 酢酸イソアミルの法規制情報

酢酸イソアミルは、前述の有害性のため、法令によって規制を受ける物質です。労働安全衛生法では 名称等を通知すべき有害物、名称等を表示すべき有害物、 第2種有機溶剤等、危険物・引火性の物に指定されています。

消防法では第4類引火性液体、第二石油類非水溶性液体に指定されています。法令を遵守して正しく取り扱うことが必要です。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/0734.html

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