リン酸アンモニウム

リン酸アンモニウムとは

リン酸アンモニウムとは、リン酸とアンモニアの酸塩基反応によりえられる無機化合物です。

リン酸一アンモニウム (NH4H2PO4) 、リン酸二アンモニウム ((NH4)2HPO4) 、リン酸三アンモニウム ((NH4)3PO4) の3種類があり、リン酸アンモニウムはこれらの総称です。

リン酸アンモニウムの使用用途

工業的に広く用いられているリン酸アンモニウムは、リン酸一アンモニウムとリン酸二アンモニウムです。この2つのリン酸アンモニウムは組成が異なりますが、用途としては共通しているものが多くみられます。

1. リン酸一アンモニウム

様々な種類の火災に対して消火効果を発揮する万能型消火器であるABC消火器の消火剤として使用されています。

2. リン酸二アンモニウム

燐安と呼ばれ、化学肥料原料として広く使用されています。工業用途では、金属表面処理剤、有機合成触媒、金属表面処理剤、排水処理剤、染色助剤、ホーロー釉薬として使用されています。

医薬、食品用では、試薬、バイオ薬剤、醸造用添加剤・医薬品・食品類の膨張剤、乳化剤、微生物培養基剤、化粧品のpH調整剤、緩衝剤、口腔ケア剤などに有用です。

リン酸アンモニウムの性質

1. リン酸一アンモニウム (NH4H2PO4)

分子量115.03、無色または白色の結晶性粉体です。比重は1.803、融点は190℃で、空気中でも安定です。水に対して良く溶け、水溶液はpH4.0~5.0の弱酸性を示し、緩衝作用があります。

可溶性のアルカリ土類金属と反応して、難溶性の塩を生成します。エタノールにはほとんど溶解しません。加熱すると216℃以上で分解してアンモニアが発生します。

2. リン酸二アンモニウム ((NH4)2HPO4)

分子量132.06、無色または白色の結晶性粉体です。比重は1.619、融点は190℃で、空気中で比較的安定です。水に対して良く溶け、水溶液はpH7.6~8.4の弱アルカリ性を示し、緩衝作用があります。

可溶性のアルカリ土類金属と反応して、難溶性の塩を生成します。エタノールにはほとんど溶解しません。加熱すると155℃以上で分解しアンモニアが発生します。

3. リン酸三アンモニウム ((NH4)3PO4・3H2O)

水和物として製品があり、分子量203.13、白色の結晶性粉体です。空気中では不安定でアンモニアを発生してリン酸二アンモニウムに変化するため、強いアンモニア臭があります。

水にはよく溶け、水溶液はpH10程度のアルカリ性を示します。エタノールにはほとんど溶解しません。

リン酸アンモニウムのその他情報

リン酸アンモニウムの製造方法

リン酸アンモニウムは、リン酸とアンモニアを水溶液中で反応させることにより製造されています。この反応の際のリン酸とアンモニアの配合比を変えることで、3種類のリン酸アンモニウムを作り分けることが可能です。

  • H3PO4 + NH3 → NH4H2PO4
  • H3PO4 + 2NH3 → (NH4)2HPO4
  • H3PO4 + 3NH3 → (NH4)3PO4

リン酸アンモニウムの原料であるリン酸の製造方法として、湿式法、乾式法と呼ばれる2つの製造方法が知られています。リン鉱石を原料とする点は共通ですが、湿式法は硫酸でリン鉱石を分解し、乾式法は電気炉でリン鉱石を熱分解します。

乾式法のほうが、エネルギーコストがかかり製造コストが高くなる反面、高純度のリン酸を得ることができます。このため、高純度を求めない肥料用途には湿式法、それ以外の用途に、乾式法で製造されたリン酸が用いられてきました。

一方、湿式法で、不純物である金属、有機物を除去する精製技術は年々進化しています。現在では工業用途や食品用途に求められる品質を満たす、湿式法で製造されたリン酸も作られるようになってきています。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/KAG_DET.aspx?joho_no=27588

 

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