ポリブチレンテレフタレートとは
ポリブチレンテレフタレートとは、エンジニアリングプラスチックの一つである熱可塑性のポリエステルです。
通常、PBT (Poly Butylene Terephthalate) と略され、別名としてはポリテトラメチレンテレフタレート (PTMT) などがあります。ポリエチレンテレフタレート (PET) のアルキル鎖の炭素の数が2から4に増えた構造で、PETと同様の特性を持っています。
基本的には、安定性が高く、毒性についても明らかになっていないため、比較的扱いやすい素材です。しかし、消防法では、指定可燃物、合成樹脂類に該当します。
ポリブチレンテレフタレートの使用用途
ポリブチレンテレフタレートは、機械物性がよい、耐熱性が高い、耐薬品性が高い、加工性が良いことが特徴で、さまざまな製品の素材として使用されています。米国では自動車分野での使用が主流ですが、日本においては電気・電子分野で主に使用されてきました。近年は、特に軽量であるという特性を生かし、自動車分野で使用されることが増えてきています。
1. 自動車分野
- イグニッションコイル
- ワイパーアーム
- ディストリビューター
- スイッチ類
- ヘッドライトハウジング
- モーター部品
- バルブ
- ギヤ
- 排気・安全関係部品
2. 電気・電子分野
- スイッチ類
- コネクター
- ソケット
- リレー
- ハウジング
- モータ部品
3. その他
食品包装用、カメラ部品、時計部品、ギヤ、カム、ベアリングなど。
ポリブチレンテレフタレートの特徴
ポリブチレンテレフタレートは、融点が225℃、荷重たわみ温度65℃ (1.8kPa) 、引張強度56kPa、曲げ強度81kPaです。ポリブチレンテレフタレートは、複合素材として使用されることも多く、例えばガラス繊維を30%加え複合化したPBTは、電気特性や誘電率を変えないまま、荷重たわみ温度200℃以上 、引張強度127kPa、曲げ強度186kPaと大幅に機械物性を高めることが可能です。
ポリブチレンテレフタレートは、優れた機械物性の他にも、電気特性、耐薬品性、耐熱性、耐摩耗性、低吸水率、寸法安定性に優れるなどの特性を持っています。また、1,4-ブタンジオールとテレフタル酸という比較的安価な原料から作られるため、コストと性能のバランスに優れ、他のエンジニアリングプラスチックに対して十分な競争力を持っていると言えます。
ポリブチレンテレフタレートのその他情報
ポリブチレンテレフタレートの製造方法
ポリブチレンテレフタレートの製造方法としては、1,4-ブタンジオールとテレフタル酸のエステル化反応により作られる直接重合法と、1,4-ブタンジオールとテレフタル酸ジメチルのエステル交換反応により作られるDMT法があります。
1. 直接重合法
テレフタル酸1モルに対して、2モルの1,4-ブタンジオールを常圧下、150~230℃で60~120分間反応させて、ビスヒドロキシブチルテレフタレート (BHT) を合成します。次いで温度を250~270℃、133Pa以下の減圧条件とし、生成する1,4-ブタンジオールとテトラヒドロフランを除去しながら重合を進行させることで、ポリブチレンテレフタレートが得られます。エステル化の触媒として、チタン系の触媒がよく用いられます。
2. DMT法
テレフタル酸ジメチル1モルに対して、2モルの1,4-ブタンジオールを常圧下、150~200℃で60~120分間反応させて、直接重合法と同様にBHT を合成します。この際にメタノールが生成するので除去しながら反応を行います。
1,4-ブタンジオールの量はテレフタル酸ジメチルに対して2モルとしていますが、この量比によって反応時間が左右され、モル比は小さいほどエステル交換速度を大きくすることが可能です。生成したBHTは直接重合法と同様にして、ポリブチレンテレフタレートが得られます。
重合に得られたポリブチレンテレフタレートにガラス繊維を混錬してガラス繊維強化グレードにしたり、難燃剤などの添加剤を混錬して難燃性を上げて、製品化されます。