ホウ酸ナトリウムとは
ホウ酸ナトリウムとは、ナトリウム含有ホウ酸塩鉱物です。
ホウ酸ナトリウムは「二、四、五、六、八ホウ酸ナトリウム」など、さまざまな化合物の総称ですが、最も一般的なものは四ホウ酸ナトリウムで「ホウ砂 (英: borax) 」とも呼ばれています。
ホウ酸カルシウムに炭酸ナトリウムを作用させることで製造できますが、吸湿性をもっているため、保存の際は空気に触れないように注意することが必要です。PRTR法においては、第1種指定化学物質に指定されています。
ホウ酸ナトリウムの使用用途
ホウ酸ナトリウムは、無水物と水和物の両方がありますが、使用する場合には、水和物が使用されることが多いです。最も一般的な四ホウ酸ナトリウム十水和物は、ホウ素の原料鉱石として工業的に使用されています。
例えば、ホウ酸ナトリウムは、ガラス、陶磁器のうわぐすりに用いられるだけでなく、洗剤や染色、木などの防腐・防食剤、農薬、殺虫剤にも使用可能です。また、水和物でホウ砂となったものは、一般向けにも流通しています。
植物における必須微量要素のホウ素の肥料や原子炉の放射線遮蔽材としても、ホウ酸ナトリウムを使用できます。
ホウ酸ナトリウムの性質
ホウ酸ナトリウムは、常温で固体です。無色~白色で、空気に触れることで不透明になります。
ホウ酸ナトリウムのモース硬度は2.5、比重は1.7、20℃の水に対する溶解度は4.7g/100mLです。ホウ酸ナトリウムの中で最も一般的な四ホウ酸ナトリウムの化学組成は、Na2B4O5(OH)4・8H2Oであり、Na2B4O7の十水和物です。
単斜晶系で、空気中では風解しやすいため、結晶水を失ってNa2B4O5(OH)4・3H2Oという構造のチンカルコナイト (英: Tincalconite) になります。
ホウ酸ナトリウムのその他情報
1. ホウ酸ナトリウムの産出地
ホウ酸ナトリウムは、塩湖が乾燥した跡地などで産出されることが多いです。古くはチベットにある干湖からヨーロッパにもたらされ、特殊ガラスやエナメル塗料などの原料として使用されていました。
また、アメリカ大陸西部にあるデスヴァレーなどの産出地が、相次いで発見されています。現在ではアメリカ、ロシア、トルコ、アルゼンチン以外にも、イタリアやドイツなどで産出されています。ただし、日本ではほとんど産出されていません。
2. ホウ酸ナトリウムの反応
ホウ素がポリマーを架橋して、ゲル化する反応を利用できます。実際に理科の実験や自由研究でスライムを作る際に、よくホウ酸ナトリウムを用いています。
ホウ酸ナトリウムをガラスに混ぜると、熱衝撃や化学的浸食にも強いホウケイ酸ガラス (英: borosilicate glass) を作成可能です。これは耐熱ガラスなどの原料になります。
3. ホウ酸ナトリウムの応用
ホウ酸ナトリウムの特性を用いた多種多様な活用方法があります。具体的には、定性分析や陶芸用の釉薬溶解剤として用いることが可能です。ホウ酸ナトリウムは、350~400℃に熱すると無水物になり、さらに熱すると878℃で融解し、無色透明のガラス状に変わります。
そして、多くの金属酸化物を融解するため、融剤として使用可能で、その際に金属によって特有の色を呈することが知られています。ホウ酸ナトリウムの水溶液は弱アルカリ性を示し、洗浄作用や消毒作用があるため、洗剤や防腐剤などに使用できます。
ホウ酸と同様に、ホウ酸ナトリウムも目の洗浄や消毒に用いられています。さらに、ホウ酸ナトリウムはアルカリ調整剤として、銀塩写真の現像液に添加されます。
4. ホウ酸ナトリウムの過去の活用例
遮蔽リングの設計ミスによって原子力船むつが放射線漏れを起こしたときに、ホウ酸ナトリウムが使用されました。すなわち、放射線が出ている箇所を特定するため、ホウ酸ナトリウムを混ぜ込んだ米をシートに載せたものを即席の遮蔽材にして、原子炉格納容器の上で場所を変えながら、放射線量を測定されました。
参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/1330-43-4.html