過塩素酸アンモニウム

過塩素酸アンモニウムとは

過塩素酸アンモニウムとは、化学式NH4ClO4で表される無機化合物で、過塩素酸のアンモニウム塩です。

過塩素酸アンモニアを反応させることで生産されます。また、過塩素酸ナトリウムの水溶液に塩化アンモニウムを加える方法でも生産できます。

酸化剤でありながら分子内にも酸化されうる窒素と水素を含むため、爆薬やロケットの推進剤として無駄が少なく効率的です。なお、CAS登録番号は7790-98-9です。

過塩素酸アンモニウムの使用用途

過塩素酸アンモニウムは、酸化力を持つ性質から、酸化剤として「爆薬」「花火」「ロケットの推進剤」などに使用されています。

1. 爆薬

産業用爆薬であるカーリットは、過塩素酸アンモニウムを酸化剤、ケイ素鉄と木粉を燃焼剤とするものです。

2. 花火

花火の材料としても使われており、過塩素酸アンモニウムをアルミニウムやマグネシウムの粉末と混ぜることで白色に発光します。これらは、花火の他に、船舶救難信号や照明弾などにも使用されています。

3. ロケットの推進剤

固体燃料ロケットの推進剤は、合成ゴムなどの固型燃料、酸化剤と金属粉などを混ぜ合わせ、固めたもの (コンポジット) を使用しています。ここで通常用いられる酸化剤が、過塩素酸アンモニウムです。

固体ロケットの酸化剤には過塩素酸カリウムが用いられていた時期がありましたが、現在では高効率な過塩素酸アンモニウムが主流になっています。ただし、過塩素酸アンモニウムは塩化水素ガスなどの有毒ガスを大量に発生することが問題視されています。

過塩素酸アンモニウムの性質

1. 外観・溶解性・結晶の性質

無色または、白色の結晶性固体であり、無臭の無機化合物です。水、アルコールに溶けやすく、アセトンには部分的に溶け、エーテルには不溶です。

過塩素酸塩は中性の希薄水溶液では安定であるため、過塩素酸イオンによる環境汚染が問題となっています。

2. 酸化力

過塩素酸塩の酸化力の源は、含まれる塩素が塩素原子の最高酸化状態 (7価) であることです。この塩素原子は自身が還元され、周囲の物質を酸化する性質を持ちます。

過塩素酸塩の中でも過塩素酸アンモニウムは、酸化されうる性質を持つアンモニアを分子内に持つため自己反応する可能性があり、特に危険性が高いです。

3. 爆発危険

安定化されていない (乾燥した) 過塩素酸アンモニウムは単独で爆発し、強力な爆発物です。安定化された状態 (例えば10%の水を含む場合) では爆発しにくいですが、燃焼を促進します。

有機物と混合すると、安定化状態でも爆発性を持つほか、有機物に限らず可燃性金属の粉末と混合しても爆発性を持ちます。

4. 加熱したときの性質と火災危険

加熱すると約150℃で分解を始めます。熱分解すると「塩素」「窒素」「酸素」などの大量の気体が発生し、急速に反応が進むと単独で爆発を起こす危険性があります。発火点は400℃です。

有機物、還元剤、静電気、熱、火花、衝撃により発火する可能性があるため、火災予防の観点でこれらを避ける必要があります。特に、強い衝撃を与えると単独でも爆発します。

火災時に生成する可能性があるガスは上記の「塩素」「窒素」「酸素」のほか、水蒸気、アンモニア、窒素酸化物、塩化水素などです。刺激性・腐食性・有毒なものが含まれ、火災時には人体に有害です。

過塩素酸アンモニウムのその他情報

1. 危険性・有害性

過塩素酸アンモニウムは、GHS分類で火薬類、酸化性固体、皮膚腐食性/刺激性物質、眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性物質、気道刺激性物質に分類されています。

2. 関係法令

過塩素酸アンモニウムは、消防法の危険物第1類酸化性固体・過塩素酸塩類です。労働安全衛生法でも危険物・酸化性の物に指定されています。危険物船舶運送及び貯蔵規則では酸化性物質類・酸化性物質であり、航空法でも同様に酸化性物質類・酸化性物質です。

毒物及び劇物取締法、PRTR法には該当していません。化学物質排出管理促進法では第1種指定化学物質であり、水質汚濁防止法では有害物質です。輸出貿易管理令では、輸出許可品目に指定されています。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/1393.html

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