ヘキサメチレンテトラミンとは
図1. ヘキサメチレンテトラミンの基本情報
ヘキサメチレンテトラミンとは、化学式がC6H12N4で示される複素環脂肪族アミンの1種です。
ヘキサメチレンテトラミンは、ヘキサミン (英: Hexamine) 、ウロトロピン (英: Urotropine) 、メテナミン (英: Methenamine) 、1,3,5,7-テトラアザアダマンタン (英: 1,3,5,7-Tetraazaadamantane) の別名でも知られています。
海洋汚染防止法で「D類物質」、PRTR法で「第一種指定化学物質」、食品衛生法で「指定外添加物」に指定されています。
ヘキサメチレンテトラミンの使用用途
ヘキサメチレンテトラミンは、治療薬に使用可能です。具体的には、適応症や膀胱炎、尿路感染症などが挙げられます。作用機序は、まずヘキサメチレンテトラミンが尿中でホルムアルデヒドになります。
そのホルムアルデヒドは、尿路で防腐性を有するため、尿路防腐剤として利用可能です。また、食品用の防腐保存剤も使用用途として挙げられます。海外では、チーズやイクラに添加されて使用されていますが、日本では食品防腐保存剤として用いられていません。
ヘキサメチレンテトラミンの性質
ヘキサメチレンテトラミンは、無色で無臭の結晶または結晶性粉末です。280°Cで昇華し、発火点は410°Cです。
ヘキサメチレンテトラミンは、水、エタノール、クロロホルムに溶けます。その一方で、ベンゼンやアセトン、エーテルには溶けにくいです。
ヘキサメチレンテトラミンの構造
ヘキサメチレンテトラミンは、アダマンタン (英: Adamantane) に似ている四面体のカゴのような構造をしています。 4つの頂点には窒素原子があり、メチレンによって繋がれています。クラウンエーテル (英: Crown ether) やクリプタンド (英: Cryptand) とは異なり、内部には他の原子や分子を取り込むための隙間はありません。
なお、モル質量は140.186g/mol、20°Cでの密度は1.33g/cm3です。
ヘキサメチレンテトラミンのその他情報
1. ヘキサメチレンテトラミンの合成法
図2. ヘキサメチレンテトラミンの合成
1859年にアレクサンドル・ブートレロフ (英: Alexander Butlerov) によって、ヘキサメチレンテトラミンは発見されました。工業的に、気相や溶液中で、ホルムアルデヒドとアンモニアを反応させて合成可能です。
2. ヘキサメチレンテトラミンの反応
図3. ヘキサメチレンテトラミンの反応
ヘキサメチレンテトラミンは、有機合成で幅広く使用可能です。具体的には、芳香環をホルミル化するための、ダフ反応 (英: Duff reaction) に用いられます。酸存在下でフェノール類のような電子豊富な芳香環を、ヘキサメチレンテトラミンを使用して、ホルミル化可能です。
また、ヘキサメチレンテトラミンは、ソムレー反応 (英: Sommelet reaction) にも利用されます。ハロゲン化ベンジルからアンモニウムの加水分解によって、アルデヒドを合成可能です。
さらに、デレピン反応 (英: Delépine reaction) では、ハロゲン化アルキルからアミンを合成可能です。ヘキサメチレンテトラミンとハロゲン化アルキルが反応して、第4級アンモニウム塩が生じ、酸加水分解によって第1級アミンが生成します。
3. 塩基としてのヘキサメチレンテトラミン
ヘキサメチレンテトラミンは、アミンのような塩基と同じように振る舞います。そのため、プロトン化や N-アルキル化が進行します。
例えば、1,3-ジクロロプロペン (英: 1,3-dichloropropene) を用いて、ヘキサメチレンテトラミンをN-アルキル化すると、第4級アンモニウム塩であるヘキサメチレンテトラミンクロロアリルクロライド (英: hexamethylenetetramine chloroallyl chloride) を生成可能です。ヘキサメチレンテトラミンクロロアリルクロライドはクオタニウム-15 (英: Quaternium-15) とも呼ばれ、シス体とトランス体の異性体混合物として生じます。