フェノールレッドとは
フェノールレッドとは、化学式C19H14O5Sで表される暗赤色から赤色の無臭結晶性粉末です。
別名フェノールスルホンフタレインとも呼ばれます。フェノールレッドは、スルホン酸基を含む二酸化フェノールの誘導体です。溶液は中性で黄色、アルカリ性で赤色を呈します。
フェノールレッドは、フェノールをo-スルホ安息香酸無水物とともに加熱して反応させることで得ることができます。
フェノールレッドの使用用途
1. pH指示薬
フェノールレッドは、その溶液が中性で黄色に、アルカリ性で赤色に呈する特徴から、pH指示薬として用いられています。pHの変色域は、pH6.8で黄色〜pH8.4で赤色です。この性質を利用して、化学実験や、生化学分析などの用途に広く利用されています。
2. 細胞培養
フェノールレッドの、中性付近で赤色、酸性よりになると黄色、アルカリ性よりになると赤紫色になる性質を利用して、細胞培養の分野でも利用されています。
一般的に多くの細胞は、pH7.0付近の中性条件を好みます。培地の色を確認することで、細胞の状態を予測することが可能となります。
培地が黄色のときは、細胞数が多すぎる、またはカビ、バクテリアが繁殖していることを予測可能です。赤紫色に変化した場合は、なんらかの原因によって培養時のCO2濃度が低下していることを予測できます。
3. 腎機能検査
フェノールレッドは、生体内で分解されず、通常はほぼ100%尿中に入り、尿より体外に排出されます。そのため、フェノールレッドは、腎機能検査にも使用されます。
通常尿のpHは6.0前後であることから、基準値より低い場合は、栄養不足、発熱、糖尿病の可能性があり、高い場合は尿路感染症の可能性があることを予測することができます。
フェノールレッドの特徴
フェノールレッドは、分子量354.38、CAS登録番号143-74-8の有機化合物です。
1. 物理的性質
300℃以上で分解する性質を持ち、沸点、分解温度、引火点に関するデータはありません。また、密度、蒸気圧、爆発範囲、粘度に関するデータもありません。
2. 化学的性質
水への溶解度は約1g/1300mLであり、ほとんど溶けません。また、エタノールにやや溶け、ジエチルエーテルにはほとんど溶けません。薄い水酸化ナトリウム溶液に溶けます。
通常の取扱条件において安定ですが、光の暴露により徐々に分解する性質があります。また強酸化剤と接触すると激しく反応することがあります。
一酸化炭素、二酸化炭素、硫黄酸化物などの危険有害分解生成物を発生する可能性があるため、日光、光、高熱、強酸化剤との接触を避ける必要があります。
フェノールレッドのその他情報
1. フェノールレッドの安全性
GHSでは、皮膚腐食性 / 刺激性では区分2、眼に対する重篤な損傷性 / 刺激性では区分2Aに分類されています。皮膚や眼に付着した場合は、直ちに多量の水で洗い流し、刺激等が続く場合は医師の診断、手当てを受ける必要があります。
急性毒性や発がん性、生殖毒性、特定標的臓器毒性 (単回・反復暴露) は確認されていません。また、環境に対する毒性、有害性も確認されていない状況です。廃棄時は、関連法規ならびに地方自治体の基準に従って廃棄を行います。
2. フェノールレッドの取扱方法
作業者は、呼吸器保護具、保護手袋、保護眼鏡、長袖作業衣し、必要に応じて保護面、保護長靴を着用する必要があります。また、取扱い中は飲食、喫煙をせず、取扱後は手をよく洗います。
作業場は、換気装置を設置し、局所排気または全体換気が必要です。そのほか、粉じん、ミスト、蒸気、ガスの発生を防止し、粉じんの堆積を防ぐ対策を行います。
湿気、水、高温体、強酸化剤、日光などで分解する可能性があるため、接触を避けて取扱います。
3. フェノールレッドの保管
製品が他の物質に汚染されないよう清潔な場所で保管し、光の暴露や高温多湿を避けます。容器は密閉し冷暗所にj保管します。
保管容器は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ガラスなどを使用し、食料や飼料などとは離して保管します。