フルオレセイン

フルオレセインとは

フルオレセインとは、化学式C20H12O5で、分子量332.31の黄赤色の粉末です。

1871年にドイツの化学者アドルフ・フォン・バイヤーにより合成されました。フルオレセインは、水に溶けず、エタノールには、わずかに溶けます。

蛍光色素の1種であり、鮮やかな緑色の蛍光を発することで知られています。この光学的性質から、バイオサイエンス、診断薬、顕微鏡技術など、さまざまな分野で利用可能です。

フルオレセインは、無水フタル酸とレソルシノールを塩化亜鉛下で、210℃に加熱させ、縮合反応を起こすことにより、フルオレセインを得られます。

フルオレセインの使用用途

フルオレセインは、その独特な蛍光性を活かして、バイオサイエンス、医療用診断薬、分析化学など、さまざまな分野で用いられています。

1. バイオサイエンス

フルオレセインは、蛍光顕微鏡や細胞生物学で広く使用されています。抗体や核酸プローブにフルオレセインを共役させ、特定のターゲット分子や細胞構造に結合させることで、観察対象の位置や動きの追跡が可能です。

2. 医療用診断薬

蛍光免疫測定法や蛍光in situハイブリダイゼーション. (FISH) などの手法では、フルオレセインが病原体や遺伝子変異の検出に活用されます。また、眼科学の領域では、フルオレセインを血管造影をする際に用いることで、診断試薬として使用可能です。

3. 分析化学

フルオレセインを基にした蛍光プローブは、特定のイオンや小分子を検出するための化学センサーとして用いられます。解析対象と結合することで蛍光強度が変化するため、定量分析が可能です。

また、フルオレセインは、井戸水や河川に含まれるアンモニアを検出するために用いられています。

フルオレセインの性質

フルオレセインは、光に対する感受性が高く、紫外線や可視光の照射によって緑色の蛍光を発します。また、水に溶けやすく、pHによって蛍光強度が変化することが知られています。

このpH感受性はフルオレセインの特徴で、一般的に、pH 7-9の範囲で最も蛍光強度が高くなります。これは、フルオレセイン分子内の水酸基がプロトンを受け渡しやすく、環境の酸性度に応じて分子の形態が変化するためです。

フルオレセインは、酸や塩基に対して比較的安定であり、多くの場合で分解されることはありません。ただし、極端なpH条件下では分解する可能性があります。フルオレセインは、光安定性に優れているとは言い難く、照射される光によって分解が進行することがあります。使用時や保存時には遮光が必要です。

フルオレセインの構造

フルオレセインは、紫外線や可視光に対する感受性が高く、光を照射することで鮮やかな緑色の蛍光を発します。この蛍光は、分子内の共役π電子系により引き起こされ、励起状態から基底状態へ戻る際に光子が放出されます。

フルオレセインはキサンテン骨格を持つ有機化合物です。キサンテン骨格は3つの環構造からなる、平面性の高い構造で、共役π電子系の形成によって、特異な光学的性質を示します。

また、フルオレセイン分子内には、3位と6位に水酸基が存在します。これらの水酸基はフルオレセインの水溶性を向上させるほか、プロトンの受け渡しによって、pHに応じた蛍光強度の変化が起こります。

フルオレセインのその他情報

フルオレセイン の製造方法

フルオレセインは、フタレインとレソルシノールを原料として合成されます。この反応には主に2つの方法が用いられます。

1. フリーデル・クラフツ反応による合成
この合成法は、フタレインとレソルシノールを塩基存在下で反応させる方法です。フタレインのカルボニル基がレソルシノールのベンゼン環上の水酸基と反応し、9-オン構造を形成することで反応が進行し、フルオレセインが得られます。

2. ウィッティヒ反応による合成
こちらの合成法では、まず、ヨードメタンとトリフェニルホスフィンを用いてウィッティヒ試薬を生成します。

ウィッティヒ試薬をフタレインに作用させ、オレフィン結合を形成させた後、レソルシノールと反応させることで、フルオレセインが合成されます。

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