パルス電源

パルス電源とは

パルス電源 (英:pulse power generator) とは、きわめて短い時間の間に数キロボルトという高電圧を発生する装置のことです。

特徴として、電圧の立ち上がり時間が極めて速いにも関わらず、高電圧 (~30kV程度) の出力を高周波数 (~100kHz程度) で繰り返すことが挙げられます。また、連続出力でなく、冷却時間が存在するため、機器自体や空間の温度上昇を抑制できます。

高い電圧出力を要する学術・産業分野 (プラズマ発生の電源装置など) において、利用される装置です。

パルス電源の使用用途

1. プラズマ発生用

プラズマ発生には高い出力電圧を必要とし、パルス電源はプラズマ発生用の電源として最適です。供給するパワーは、パルス幅と周波数を変えることでコントロール可能であり、プラズマ発生などの高密度エネルギーが必要な場合には好都合です。

パルス電源は、プラズマ応用機器の電源として多く利用されています。プラズマから発生した光・電子・イオンといった荷電粒子を対象物に作用させたり、パルス放電による衝撃波発生を用いた殺菌や水処理などに利用されたりしています。

2. エキシマレーザー用

エキシマレーザーのような大出力高効率レーザーを駆動させる上で、レーザーガスを瞬間的に励起する必要があるため、短時間・高出力のパルス電源が必要です。このような大出力のレーザーを駆動させるための用途もあります。半導体露光技術の発展に貢献しています。

3. その他

パルス電源は、EUV用パルス電源や薄膜や微粒子を基材・基板の表面に吸着・堆積させるプラズマCVDにも、使用されます。EUVは極端紫外線のことです。

プラズマCVDは、半導体の絶縁膜や保護膜として使われます。また、切削工具の刃先部やギアの接触部に、窒化炭素や窒化チタンをコーティングするのに有用です。

小形のパルス電源は、計測器の用途もあります。走査電子顕微鏡SEMや質量分析MSなどへ、高速・高電圧パルスを供給します。

パルス電源の原理

パルス電源は、充電器部分とパルス発生部分に分けられます。

1. 充電器

パルス電源に入力した交流電源は、まず整流回路により直流へ変換され、インバータを通して昇圧され出力します。そして、パルス発生部にある初段コンデンサに充電されます。

2. パルス発生

充電された電力は、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ (IGBT) でパルス状に変換されます。IGBTとはパワー半導体の1種で、大電力の高速スイッチングが可能です。

IGBTに加え、可飽和リアクトルと呼ばれる素子を用います。可飽和リアクトルは、電流が小さい領域では透磁率が高く、電流を通しませんが、電流が増加して磁束密度が一定以上になると、電流を透過させることができるようにな流のが特徴です。この回路を磁気圧縮回路と呼びます。

次に、発生したパルス電圧を次段に用意された可飽和リアクトルに誘導します。そして、昇圧し磁気圧縮回路を用いて、100ns以下にまで圧縮した短パルスを負荷へ出りょぅ可能です。コンデンサの充電速度と、可飽和リアクトルの飽和値との関係によって、回路の充電電圧特性が決まります。

リアクトルのインダクタンスを初段より小さくしておけば、より短時間でパルス電圧を発生させられます。より短いパルスが必要な場合は、多段の過飽和リアクトルを用意します。

パルス電源の特徴

1. 瞬間的な出力

パルス電源は、出力が0の時にコンデンサーにエネルギーを蓄えることができるので、ONの時に瞬間的な高出力のエネルギーの発生が可能です。

2. 高速立ち上がり・高速繰り返しが可能

一般の電源は、ONの時、出力の上限値に達するまでに時間を要します。一方、パルス電源は、立ち上がり時間が非常に短く、マイクロ秒~ナノ秒程度の時間で上限に達します。また、この出力を高速に繰り返すことも可能です。

3. 少ない発熱

パルス電源は、出力時間の制御が可能なので、断続的に運転して冷却時間を設けることができます。これにより、機器や空間の温度上昇を抑えることができます。その為、熱に弱い機器の電源に使用することが可能です。

4. 長寿命

オールソリッドステートで、長期間安定したパルス出力を供給できます。

参考文献
http://pekuris.co.jp/technology/pulse.php

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