溝加工

溝加工とは

図1. 溝加工の例

溝加工とは、材料の表面に溝や切込みを切削する工程です。

溝加工の主な目的は、他の部材と篏合 (かんごう) させて回転方向に空回りしないよう固定したり、加工した溝に部品取り付け用のボルトを設けたりすることです。部品の形状を調整し、精密な寸法を得るために行われます。

加工する溝の本数は1本だけのときもあれば、複数本の溝を形成する「スプライン加工」を行う場合もあります。通常使用される工作機械は、フライス盤マシニングセンタ、スロッター、ブローチ盤などです。これらを使用して、平面上または回転体に溝を切削加工します。

溝加工の使用用途

図2. 使用用途の例

溝加工は機械部品、シール、歯車など、さまざまな製品で用途があります。正確な溝加工は、製品の性能と信頼性を向上させるため、多くの産業分野で不可欠です。

1. 確実な動力伝達

シャフトとギアのように、回転体機構の空回り防止のための固定によく使われます。シャフトに入力ギアと出力ギアが組付けられた構造の場合に、入力ギアからシャフトを介して出力ギアへ確実な動力伝達を行うには、セレーションやスプラインといわれる構造が必要です。この構造を実現するために溝加工が行われます。

2. シール性の確保

ピストンエンジンのピストン側面や、油圧シリンダの内面円筒面などに加工されます。この目的は、シール性の確保です。

ピストンリングのための溝加工をすることで、燃焼室の圧力を管理し、効率な燃焼をサポートします。また、油圧シリンダなどにおいては、内部から油漏れ防止や外部からのコンタミ混入の防止のため、Oリングやダストシールを取り付けるための溝が加工されます。

3. 加工・組立精度の向上

フライス盤などで使用されるワーク (非加工物) を固定する台などに設けられている溝です。簡単で正確なワークの位置決めが可能で、加工精度の向上につながります。

4. メンテナンス・維持管理コストの低減

航空機のジェットエンジンに使用されるブレードを保持する箇所に対して、溝加工が施されています。この目的は、交換時のコスト抑制です。

消耗品したブレードを交換する際に、全体ではなく、損傷の大きなもののみを交換することで、交換コストを抑えることができます。シャフトとギアのアッセンブリにおいても同様で、損傷したギアのみの交換が可能となります。

溝加工の原理

溝加工は、さまざまな切削工具を使用して材料に溝をつくる工程です。溝の形状に合わせて、使用される切削工具が選定されます。代表的な例としては、エンドミルやT字スロッター、ホブ、ブローチなどです。

溝加工の工程では、勘合させることが目的であることから、高い加工精度が要求されます。また、JIS規格などによって、その形状が定義づけられています。

溝加工の種類

図3. 溝加工形状の例

溝加工は、溝の形状や本数、使用目的で分類できます。溝加工の形状は、一般的な形状が規格化されており、大量生産が可能なものもあります。

1. キー溝加工

四角形状 (キー型) の溝を1本加工する方法です。シャフトとギアの構成においては、シャフトの側面とギアの内面、各々が接する箇所に同じ幅の溝を加工します。

組立時には、「キー」と呼ばれる板を差し込みます。ギアとシャフト間の空転がなくなり、動力伝達が可能です。シャフト側のキー溝には、フライスやエンドミルなどの切削工具を使用します。ギア側にはスロッターやブローチによる加工が代表的です。

2. T溝加工

T文字を逆さにした形状の溝を加工し、下部の広くなった部分に他の部材との固定用ボルト穴を設けて、固定することを可能とした方法です。加工は、最初にキー溝加工を施したのちTスロットカッターという専用刃を使用して、溝下部の広い部分を作るように加工します。ワーク固定台などに施されます。

3. スプライン加工

四角形状の溝を複数本加工した方法です。キー溝同様に回転物における確実な動力伝達を目的にしたものです。キー溝に比べて、篏合 (かんごう) 時の強度が大きく、より大きな動力を伝達したいときに使用されます。

4. インボリュートスプライン加工

スプライン加工と異なり、溝の形状を鋸歯状 (インボリュートスプライン) に加工した方法です。回転の伝達性能を向上させたい時に使われます。加工が容易なわりに精度が出やすいことが特徴です。ホブ加工や専用のエンドミル (ミーリング加工)、鍛造などによって形成されます。

5. ブローチ加工

加工時使用する切削工具のブローチという名称から名づけられた加工です。一本の棒上に連続した切削刃が取り付けられた「ブローチ」と呼ばれる切削刃を使用します。

ブローチを使用すると一度の動作で、目的の形状を実現可能で、大量生産に使用できます。一方で、工作物を貫通する形でブローチを引き抜いて加工するため、底がある (貫通していない) 加工には適しません。この場合は、スロッターを使用します。

6. Oリングの溝加工

ピストンリングやOリングなどを組み込むための溝を加工する方法です。シール性の確保などを目的に、使用されるピストンリングやOリング (O文字形状のゴム) の形状に合わせて溝を形成します。

丸棒の外面や円筒内面には旋盤を、フランジの合わせ面など平面上であればフライスなどで加工します。

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