デオキシコール酸とは
デオキシコール酸 (Deoxycholic acid) とは、胆汁酸の1種であり、腸内の細菌の代謝により、一次胆汁酸から生成される二次胆汁酸の1つです。
融点171〜174℃で、常温において白色の固体です。デオキシコール酸は、主に肝臓で生成され、胆嚢に貯蔵され、腸での脂肪の消化と吸収に関与します。
肝臓において、コレステロールから一次胆汁酸のコール酸およびケノデオキシコール酸が合成されます。一次胆汁酸は、アミノ酸のグリシンやタウリンと抱合体を形成し、胆汁成分として十二指腸に分泌された後、腸内細菌の作用によりデオキシコール酸やリトコール酸などの二次胆汁酸に変化します。
デオキシコール酸は、コレステロールを分解し、脂肪の吸収を助けることで、消化システムにおいて重要な役割を果たしています。また、実験的な洗浄剤や乳化剤としても利用されており、膜関連タンパク質の単離のために用いられることも多いです。
デオキシコール酸の使用用途
デオキシコール酸単体では、デスオキシコーレート培地やXLD寒天培地などの調製、胆汁酸の研究、および光学分割剤として利用されています。また、葉酸と共修飾したキトサンミセルの癌化環境下において、pH応答性メカニズムを評価する研究用途もあります。
デオキシコール酸と脂肪酸との複合体は、食品の乳化剤、コルチゾン合成の前駆体、利胆剤として使用可能です。医薬品分野では、ウルソデオキシコール酸は胃腸薬として、ケノデオキシコール酸はコレステロール系胆石溶解の薬物療法や胃腸薬に用いられています。
また、アメリカにおいては、オキシコール酸は「Kybella」という商品名で顎下脂肪を減らす用途で販売されています。これは、食品医薬品局 (FDA) によって承認されており、顎下脂肪に注入されたデオキシコール酸は脂肪細胞の破壊を助け、数ヶ月かけて代謝されるためです。
デオキシコール酸の性質
デオキシコール酸は二次胆汁酸の1種で、化学式はC24H40O4で表されます。主に肝臓で生成され、消化および脂質吸収のプロセスにおいて重要な役割です。
デオキシコール酸は両親媒性の分子で、水と油の両方に相溶性を持ちます。この性質により、消化管内で脂質の乳化を助けることが可能です。
また、消化酵素の活性化や脂質の吸収を助ける働きをします。そのほか、腸内細菌叢の構成や機能に影響を与えることが知られています。
デオキシコール酸の構造
デオキシコール酸の構造は、ステロイド骨格が基本となっており、コレステロールと共通のその分子構造を有しています。ヒドロキシ基とカルボキシ基の結合部位が特徴的です。これらの官能基がデオキシコール酸の水溶性と両親媒性をもたらし、脂肪の消化と吸収に関与する性質を示しています。
デオキシコール酸の構造は、その生物学的活性や物理化学的性質に関与しており、消化システムでの脂肪の分解や脂肪減少の治療に役立っています。
デオキシコール酸のその他情報
デオキシコール酸の製造方法
デオキシコール酸は、天然に存在する胆汁酸で、主に家畜の胆嚢や牛の胆汁から抽出されます。しかし、天然の胆汁酸を抽出する方法は効率が低く、コストがかかるため、工業的には、現在は、主に化学合成によって製造されています。
ケノデオキシコール酸の合成
デオキシコール酸の合成の第一段階は、ケノデオキシコール酸 (CDCA) の合成です。ケノデオキシコール酸は胆汁酸の1種で、デオキシコール酸の前駆体です。ケノデオキシコール酸はコレステロールを原料とした酸化反応によって合成されます。
デオキシコール酸への変換
ケノデオキシコール酸をデオキシコール酸に変換するためには、ケノデオキシコール酸12位のヒドロキシ基を除去する必要があります。酸化剤や還元剤を用いる方法や塩酸、硫酸、トリフルオロ酢酸などの酸触媒を用いる方法が一般的です。