ピペリジン

ピペリジンとは

ピペリジンの基本情報

図1. ピペリジンの基本情報

ピペリジン (Piperidine) とは、複素環式アミンに分類される有機化合物です。

化学式はC5H11Nで表され、6員環構造をもちます。CAS登録番号は、110-89-4です。分子量85.15、融点-7℃、沸点106℃であり、常温では無色の液体です。密度は0.8606g/cm3 (20℃) 、特有のアミン臭を持ちます。

別名には、「ヘキサヒドロピリジン」「ペンタメチレンイミン」「アザシクロヘキサン」「シクロペンチミン」などがあります。水とは混和し、アルコール、エーテル、ベンゼンクロロホルムにも可溶です。

ピペリジンの使用用途

ペプチド固相合成法とピペリジン

図2. ペプチド固相合成法とピペリジン

ピペリジンの主な用途は、ゴムの加硫促進剤や溶剤、エポキシ樹脂の硬化剤などです。非常に単純な分子構造を持つため、様々な医薬品の部分構造になっています。代表的なものとして、モルヒネ、ピチジン、フェンタニルが挙げられます。

また、実験室におけるピペリジンの重要な用途の一つが、ペプチド固相合成における脱保護反応です。ペプチド固相合成法は、化学的にペプチドを合成する際に一般的に用いられる方法です。この合成方法では、表面をアミノ基で修飾した高分子ゲルのビーズなどを固相として用い、脱水縮合反応によって1つずつアミノ酸鎖を伸長していきます。

伸長させるアミノ酸同士が自己縮合するのを防ぐため、反応点以外の官能基が保護基によって保護されたアミノ酸を用います。つまり、アミノ酸の縮合による伸長と、脱保護を交互に繰り返す合成の流れです。

ペプチド固相合成法のうち、Fmoc合成法では、N端の保護基として9-フルオレニルメトキシ基 (Fmoc基) を用います。このFmoc基の除去に、2級アミンであるピペリジンが用いられています。

ピペリジンの原理

ピペリジンの化学反応

図3. ピペリジンの化学反応

1. ピペリジンの製造方法

ピペリジンは、工業的にはピリジンの還元によって製造されます。代表的なものは、硫化モリブデン (IV) 触媒を用いた、水素化反応です。

また、エタノール、金属ナトリウム、液体アンモニアを用いた、Birch還元によってもピリジンをピペリジンに還元することができます。

2. ピペリジンの化学反応

ピペリジンは、ケトンをエナミンに変換する反応に広く使用されています。生成するエナミンの代表的な利用方法として、Storkエナミン反応があります。

この反応は、生成したエナミンをアルキルハライド、アシルハライド、Michealアクセプターなどの求電子剤と反応させることにより、α置換を行うものです。置換基の挿入後、加水分解を行うことにより、エナミンを再びケトンへと変換することができます。また、有機合成化学では、溶媒や塩基として広く使用されています。

3. ピペリジンの性質

ピペリジンは、引火性の高い液体です。蒸気は空気より重いため、遠距離発火することもあります。燃焼すると分解し、分解生成物は窒素酸化物などの有毒ガスを発します。そのため、消防法においては、第4類引火性液体、第一石油類水溶性液体に指定されている化合物です。

人体に対しては有毒で、特に目、皮膚、気道に対して腐食性を示します。高濃度の蒸気を吸入すると肺水腫を起こすことがあります。

ピペリジンの種類

ピペリジンは、主に研究・開発用試薬として販売されています。通常、ガラス瓶で販売され、25mL , 100mL , 500mLなどの種類があります。

常温保存可能な試薬として取り扱われますが、人体への有害性があり、また引火性も高い液体です。取り扱いの際は注意が必要です。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/110-89-4.html
https://www.nies.go.jp/kisplus/dtl/chem/BNT00189
https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200907013648227781
https://www.chemicoco.env.go.jp/detail.php?chem_id=1510&lw=4
http://www.nihs.go.jp/hse/chem-info/aegl/agj/ag_piperdine.pdf

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