シクロペンタノールとは
図1. シクロペンタノールの基本情報
シクロペンタノール (Cyclopentanol) とは、シクロペンタンの水素が一つヒドロキシ基で置換された構造をしている有機化合物です。
環状アルコールの1種にあたります。CAS登録番号は96-41-3です。分子式C5H10O、分子量86.13、融点-19℃、沸点139-140℃です。常温では無色からわずかにうすい黄色の液体となっており、 不快臭を放つとされています。密度は0.949g/mLです。
他の名称には、「シクロペンチルアルコール (Cyclopentyl alcohol) 」「ヒドロキシシクロペンタン (Hydroxycyclopentane) 」などがあります。水には難溶ですが、アルコール、エーテルおよびアセトンには極めて容易に溶けます。
シクロペンタノールの使用用途
図2. シクロペンタノールの酸化によるシクロペンタノンの合成の例
シクロペンタノールの主な用途は、一般的な溶剤、香料調剤用の溶剤、医薬・農薬原料などです。また、シクロペンタノールは、シクロペンタノンの前駆体であり、TEMPOなどの安価な触媒で極めて高選択的にシクロペンタノンを製造することができます。
シクロペンタノンは各種産業用途で利用価値が高い化合物であるため、この変換反応は非常に重要です。例えば、特定フロンや1,1,1-トリクロロエタンは、金属材料に付着する油の洗浄液として有益ですが、環境に影響があるため、新しい代替洗浄液が必要となっています。
そこで、生分解性が良好であるシクロペンタノンが、近年代替洗浄液として注目を集めています。また、シクロペンタノン (及びその前駆体のシクロペンタノール) は、各種医薬品の合成中間体であるため、合成化学的にも重要な化合物と言えます。
シクロペンタノールの原理
シクロペンタノールの原理を性質と化学反応の観点から解説します。
1. シクロペンタノールの性質
シクロペンタノールは、引火性の液体であり、引火点は51℃です。そのため、熱、火花、裸火、高温のものから離して使用しなければなりません。
また、急性毒性もあるため、取り扱いの際は適切な保護具を必要とします。火災時にも、刺激性、腐食性及び毒性のガスを発生するおそれがあります。
労働安全衛生法では、危険物・引火性の物として指定を受け、消防法では第4類 第2石油類非水溶性液体に指定される化合物です。ただし、有機則とPRTR法では特に指定を受けていません。
2. シクロペンタノールの化学反応
図3. シクロペンタノールの反応の例
シクロペンタノールは、通常のアルコールと同様、酸触媒存在下でシクロペンテンに水を付加させることで得られます。
また、反対に、シクロペンタノールは脱水させるとシクロペンテンと水を生じます。
シクロペンタノールの種類
シクロペンタノールは、一般的には化学試薬として販売されています。そのため、容量は25g , 5mL , 25mL , 100 mL , 500mLなど、実験室用の少量のものが主に流通しています。常温保存可能な化学薬品です。