グルコノデルタラクトン

グルコノデルタラクトンとは

グルコノデルタラクトン (英: gluconolactone) とは、化学式C6H10O6で表される天然の有機化合物です。

ハチミツに多く含まれているため、別名としてハチミツ酸があります。グルコノデルタラクトンは、ブドウ糖 (グルコース) の構造のうち1つのヒドロキシ基がケトンに置き換わった構造を有しており、甘味と酸味を持ちます。

グルコノデルタラクトンは、食品や化粧品の添加物として使用されています。

グルコノデルタラクトンの使用用途

グルコノデルタラクトンは人体に無害な天然のラクトンの1種であるため、膨張剤、凝固剤、pH調整剤、酸味料として食品に使用されています。グルコノデルタラクトン自身の有する甘味と酸味はそれほど強い風味ではないため、食品添加物として使いやすい化合物です。

1. 食品用膨張剤

膨張剤としては特に、重曹とグルコノデルタラクトンの組み合わせての使用が一般的です。ベーキングパウダーの一種として市販されています。ケーキやドーナッツ、パンなどの生地の中で、添加されたグルコノデルタラクトンと重曹はゆっくりと反応し、均一に気泡を作り生地を膨らませます。

従来の膨張剤としては、ミョウバン (硫酸アルミニウム) が一般的に用いられてきました。しかしミョウバンはアルミニウムを含むため、摂取量によっては健康を害する可能性がある食品添加物であり、さらに特有の苦味を有しています。

このミョウバンに比べ、苦味がなくアルミニウム不使用で安全であるという点がグルコノデルタラクトンを膨張剤として使用するメリットです。

2. 食品用凝固剤

食品用凝固剤もグルコノデルタラクトンの主要な用途です。グルコノデルタラクトンは水に溶けるとゆっくりグルコン酸に変化しpHを低下させる性質を持っており、例えばグルコノデルタラクトンを豆乳に加えるとゆっくりと豆乳のpHが下がります。

そして、豆乳のタンパク質が均一に凝固し豆腐になります。従来の豆腐用の凝固剤であるにがりに比べ、簡単に均一な凝固が可能であること、大量生産に対応できることがグルコノデルタラクトンの利点です。特に充填豆腐の大量生産にグルコノデルタラクトンは用いられています。

また、グルコノデルタラクトンはチーズ製造においても重要な添加剤です。牛乳にグルコノデルタラクトンを加えることで、牛乳のタンパク質を凝固させチーズを製造できます。豆腐の製造と同様、グルコノデルタラクトンからグルコン酸に変換される過程でゆっくりと溶液全体のpHが下がっていくため、均一に凝固させることが可能です。

3. pH調整剤

グルコノデルタラクトンのこの穏やかなpH調整能力は食品のpH調整のための添加材としても活用されています。主な用途は麺類や肉加工品、かまぼこなどの魚加工品のpH調整剤です。

4. 酸味料

グルコノデルタラクトンはジュースやジャム、シャーベットなどに酸味を加えるための酸味料としても使用されています。

5. 化粧品添加剤

グルコノデルタラクトンは金属イオンを捕捉するキレート効果を有しており、化粧品やシャンプー、洗顔料の安定剤として使用されています。また、グルコノデルタラクトンと他の多糖類を混ぜるとゲル状に固まる性質を利用し、顔用パックの添加材としても使用されています。

グルコノデルタラクトンの性質

化学式 C6H10O6
日本語名 グルコノデルタラクトン
英語名 gluconolactone
CAS番号 90-80-2
分子量 178.14g/mol

 

グルコノデルタラクトンは水に溶けやすく、アルコールにも可溶です。グルコノデルタラクトンを水に溶かすと、グルコン酸へと徐々に変化します。

グルコノデルタラクトンからグルコン酸への変換効率は加熱によって上昇します。

グルコノデルタラクトンのその他情報

1. グルコノデルタラクトンの別名

グルコノデルタラクトンの別名は、グルコノラクトンやGDLなどがあります。また、ハチミツに豊富に含まれる天然成分であるため、ハチミツ酸という別名もあります。

2. グルコノデルタラクトンの合成方法

グルコノデルタラクトンは、天然ではミツバチによって生体内で生成される化合物です。ミツバチの体内でグルコースから変換されてグルコノデルタラクトンが生成されます。

同様の反応を大量合成に用いたのが、発酵によるグルコノデルタラクトンの合成です。酵素を用いた発酵により、グルコースからグルコノデルタラクトンを効率的に合成することができます。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0107-0515JGHEJP.pdf

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