カドミウム

カドミウムとは

カドミウムとは、元素番号48番の金属元素で、鉱物中や土壌中などの自然環境中に広く存在する物質です。

地殻中に分布しているカドミウムが岩石の風化などの自然現象によって環境中に放出されるため、土壌や水中に天然由来のカドミウムが含まれています。亜鉛と化学的性質が似ていて、カドミウム単独ではなく、亜鉛鉱物、特に閃亜鉛鉱 (ZnS) や菱亜鉛鉱 (ZnCO3) と一緒に産出されます。動植物が育つ過程で土や水から取り込まれることにより、様々な食品や水は、微量のカドミウムを含んでいます。

カドミウム濃度の高い食品を長年にわたり摂取すると、腎機能障害を引き起こす可能性があります。そのため、国内では、食品衛生法において米、清涼飲料水及び粉末清涼飲料にカドミウムの基準値が設定されています。

カドミウムの使用用途

カドミウムは銀白色の光沢を有し、展延性に富み、加工しやすい金属です。その用途は、金属として合金材料、鉄などの電気メッキ、蓄電池の電極板、原子炉制御棒、ハンダ、銀ロウ、テレビのブラウン管などとして利用されております。また、化合物としては、顔料の原料に、例えばゴッホの「ひまわり」にはカドミウムイエローが使用されております。この他にも、触媒、電池、塩化ビニル樹脂安定剤、陶磁器着色剤などの用途があります。

カドミウムの性質

カドミウムの原子量は112.411、融点は321 ℃、沸点は765 ℃です。比重は25 ℃で8.65で、水には溶けません。汚染のない河川水中で、0.02~0.1 μg/L、海水で0.05~0.11 μg/L程度含まれているといわれています。カドミウムの結晶構造は六方晶です。

カドミウムのその他情報

1. カドミウムの化合物

カドミウムの化合物としては、以下のようなものがあります。

酸化カドミウム (CdO)
茶色の固体で、分子量は128.41、比重は8.15、CAS番号は1306-19-0です。用途はカドミウムメッキ浴添加剤、顔料、触媒、アルカリ電池などがあります。

塩化カドミウム (CdCl2)
固体で、分子量は183.32、融点は568 ℃、CAS番号は10108-64-2です。用途はメッキ、触媒などです。

硫酸カドミウム (CdSO4)
白色の固体で、分子量は209.47、比重は4.691、融点は1000 ℃、CAS番号は10124-36-4です。用途は分析用試薬、カドミウム電池などです。

硫化カドミウム (CdS)
黄色の固体で、分子量は144.48、CAS番号は1306-23-6です。カドミウムイエローと呼ばれる顔料として知られています。

テルル化カドミウム (CdTe)
黒色の固体で、分子量は240.00、比重は6.2、融点は1041 ℃、CAS番号は1306-25-8です。太陽電池などに用いられます。

セレン化カドミウム (CdSe)
黒色の固体で、分子量は191.37、比重は5.81、CAS番号は1306-24-7です。用途は顔料などです。

2. カドミウムの製造方法

カドミウムの一般的な製造は以下の手順で行われます。

  1. 亜鉛・鉛の焼結工程における除外設備より発生するガス洗浄液を、シックナー等を用いて固液分離します。
  2. 得たオーバーフローをイオン交換樹脂と接触させてカドミウムを濃縮し、カドミウムを含む再生液を得ます。
  3. 再生液を炭酸ナトリウム等で中和し、固液分離してカドミウムを炭酸カドミウムとして回収します。
  4. 炭酸カドミウムを硫酸で溶解し、不溶解分を除去した後、硫酸カドミウム溶液に粗カドミウムや電気亜鉛を投入し、セメンテーション反応によりスポンジカドミウムを得ます。
  5. スポンジカドミウムを溶解し、粗カドミウムを得、粗カドミウムを蒸留して蒸留カドミウムを得ます。

3. カドミウムの健康影響

カドミウムの人に対する経口致死量は、350~3,500mgと推定されます。骨軟化症を起こすイタイイタイ病の主な原因は、カドミウムの慢性中毒であるとされています。発がん性に関しては、国際がん研究機関 (IARC) による分類では、2A (人に対して発がん性を示す可能性が非常に高い) にランクされています。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/7440-43-9.html
https://www.mlit.go.jp/river/shishin_guideline/kasen/suishitsu/pdf/s06.pdf
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/1306-19-0.html
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/10108-64-2.html
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/10124-36-4.html
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/1306-23-6.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shikizai1937/31/7/31_300/_pdf/-char/ja

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