ジシアンジアミドとは
ジシアンジアミド (英: Dicyandiamide) とは、化学式C2H4N4で表され、シアナミドに分類される有機化合物の1種です。
IUPAC命名法による名称は2-シアノグアニジンです。その他の別名にはジシアノジアミド、DCDなどの名称があります。CAS登録番号は、461-58-5です。加熱分解により、アンモニア及び、メラミン、メラムなどを生じる物質であり、
ジシアンジアミドの使用用途
1. 主な用途
ジシアンジアミドの主な用途は、エポキシ樹脂硬化剤、澱粉糊添加剤、有機合成原料、ジシアンジアミド樹脂原料、合成洗剤安定剤、染料、肥料、農薬 (殺虫剤/殺菌剤) などです。 エポキシ樹脂の硬化剤として使用する場合は、単独で使用すると硬化温度が180℃以上と高く、硬化時の発熱も大きいため、イミダゾールアダクトなどの三級アミンを触媒として併用します。
2. 合成的用途
ジシアンジアミドは、融点以上に加熱するとアンモニアと共にメラミン、メラムなどを生じる性質があります。このため、有機合成原料としては、 シアナミド誘導体の合成に用いられます。具体的な化合物としては、グアニジン、ジシアンジアミジン、ジグアニド、メラミンなどが挙げることができます。
3. 肥料としての用途
ジシアンジアミドは、肥料として特に緩効性肥料に使われている物質です。緩効性肥料とは、徐々に効果を発揮する肥料であるため、植え付け時の基肥などに用いられます。
ジシアンジアミドは水溶性があり、土壌水分中に溶解して作用する物質です。主に亜硝酸菌などの土壌微生物に対して働きを抑制し、アンモニア態窒素 (栄養成分を土壌中に保持する) から硝酸態窒素 (植物の窒素源として即効性がある) への分解を緩やかにする効果があります。ジシアンジアミドの水への溶解度は水温に依存するため、土壌水分の温度により肥料としての効果が異なります。
ジシアンジアミドの性質
図1. ジシアンジアミドの基本情報
ジシアンジアミドは、分子量84.08、融点210℃であり、常温では白色の結晶性粉末です。結晶状態においては、斜方晶系結晶または板状結晶で存在します。熱水に溶けやすい性質です。
冷水及びエタノールにはやや溶けにくく、アセトンに溶けにくい物質です。なお、ジシアンジアミドの水溶液はほぼ中性を示します。
ジシアンジアミドの種類
ジシアンジアミドは、研究開発用試薬及び工業用薬品として一般に販売されている物質です。研究開発用試薬としては、25g、500g、1kg、3kgなどの各種容量で販売されています。通常、室温で取り扱い可能な試薬製品です。試薬製品は、研究開発用以外の用途で使用することはできません。
工業用化学品としては、通常25kgバッグなどの単位で販売されています。製品によって、エポキシ樹脂硬化剤や、澱粉糊添加剤、合成洗剤安定剤、染料など、想定されている用途が異なる場合があるため、使用する際は確認することが必要です。
ジシアンジアミドのその他情報
1. ジシアンジアミドの合成
図2. ジシアンジアミドの合成
一般的なジシアンジアミドの合成方法は、石灰窒素を水と酸で反応させてシアナミド溶液にし、これを加熱重合させることです。シアナミドは、カルボジイミドと互変異性の関係にあるため、塩基性溶液中で加熱すると、シアナミドとカルボジイミドとが反応したジシアンジアミドが生成します。
別の方法としては、反応を石灰窒素泥中で同時に行い、熱水で抽出し結晶を得る方法があります。
2. ジシアンジアミドの互変異性
図3. ジシアンジアミドの互変異性と双性イオン
ジシアンジアミドは、シアナミドと同様に互変異性を有しており、ニトリル基の結合している窒素原子は、結合状態及びプロトン化状態が平衡状態にあります。また、平衡の過程で、双性イオンとして存在する場合があります。