シトラール

シトラールとは

ゲラニアールとネラール

図1. ゲラニアールとネラール

シトラール (英: Citral) とは、一組の異性体である有機化合物のネラールとゲラニアールの混合物を指す名称です。

IUPAC命名法での名称は 3,7-ジメチル-2,6-オクタジエナールであり、レモナール (英: lemonal)という別名で呼ばれることもあります。この一組の異性体は共に分子式C10H16Oのモノテルペンアルデヒドであり、シストランス異性体の関係にあります。E体がゲラニアールで、Z体がネラールです。なお、CAS登録番号は5392-40-5です。

シトラールの使用用途

シトラールはレモンような香気を有するため、このままで賦香剤として香粧品や食品等に用いられるほか、香水や化粧品や洗顔料、ボディーソープ、シャンプー、洗剤、食品などさまざまな製品に利用されています。天然物ではレモングラス、レモン、マンダリンなどの精油やその他のさまざまな果実やスパイスに存在する物質です。

揮発性が高く、強い香りを放つため、調合香料の中でももっとも初めに香りを感じさせるトップノートに用いられています。それ以外では、他の香料の製造原料として用いられる場合もあります。

また、シトラールは一般の有機合成原料としても有用な化合物です。ビタミンAやビタミンE、ヨノンなどの化学物質の合成原料として用いられます。

シトラールの性質

シトラールの基本情報

図2. シトラールの基本情報

シトラールは、ゲラニアールとネラールの混合物です。シトラールとしては、分子量152.24、融点-10℃以下、沸点229℃であり、常温では無色から淡黄色の液体です。酸化を受けやすく、空気に触れて徐々に黄色味を呈します。

密度は0.893g/mLであり、エタノールやエーテルに易溶ですが、水には不溶です。特有の香りを持ちますが、成分のうちゲラニアールは清涼感のある強いレモン臭、ネアールは弱いレモン臭と甘味を持ちます。

シトラールの種類

シトラールは、一般的には研究開発用試薬製品や、香料原料として販売されています。研究開発用試薬製品としては、 1mg、5mg、5mL、100mL、500mL、25g、1kgなどメーカーによってさまざまな容量の製品があります。冷蔵試薬として扱われる場合と、室温で取り扱い可能な試薬として扱われる場合とがある試薬製品です。

なお、試薬製品は、研究開発用途でのみ使用可能であり、人や動物の医療用・臨床診断用・食品用に使用することはできません。産業用製品は、香料メーカー、化学メーカーなど複数企業から販売されています。

1Lボトルから、25Lドラム、180kgドラム、200Lドラムなど、超大型容量までさまざまな荷姿の販売展開です。工場などの製造現場に合わせた製品提供となっています。

シトラールのその他情報

1. シトラールの製造・合成方法

シトラールの合成

図3. シトラールの合成

シトラールは、種々の精油に含まれているため、精油からの分離によって製造することが可能です。合成的にも製造すできるため、メチルヘプテノンを原料として製造される場合があります。具体的な合成の例として、下記の合成経路が挙げられます。

  1. メチルヘプテノンとエトキシアセチレンマグネシウムブロミドの縮合反応
  2. 触媒的な部分的水素化反応 (エノールエーテルの生成)
  3. リン酸を用いた加水分解と脱水

その他の合成例の1つは、アセチレンとメチルヘプテノンの縮合反応によって生じるデヒドロリナロール中間体を経由する方法です。この中間体は、不活性溶媒中、シリコンスルホン触媒の存在下140〜150°Cで転位し、シトラールを与えます。

2. シトラールの法規制情報

シトラールは引火点99.5℃であり、引火性液体です。そのため、消防法では「第4類引火性液体、第三石油類非水溶性液体」に分類されています。ただし、 法規制に従った保管及び取扱においては安定です。法令を遵守して正しく取り扱うことが重要とされています。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/5392-40-5.html

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です