キシレンとは
キシレンとは、ベンゼンの水素2個がメチル基に置換された有機化合物です。
別名としてキシロール、ジメチルベンゼン、メチルトルエンとも呼ばれます。
キシレンの使用用途
キシレンは、メチル基が置換されている場所が異なるp-キシレン、o-キシレン、m-キシレンの3つがあり、それぞれ使用用途が異なります。異性体の分離前の混合物である混合キシレンも、工業的に使用されています。なお、混合キシレンには3つのキシレン異性体の他にエチルベンゼンが多く含まれます。
混合キシレンは、異性体分離によりp-キシレン、o-キシレン、m-キシレン、エチルベンゼンの原料になる以外にも、塗料、農薬、医薬品などの溶剤や、油脂洗浄用の溶剤などに使用されています。また各異性体は次のような様々な化学品の合成原料になります。
1. p-キシレン
別名で1,4-ジメチルベンゼンとも呼びます。p-キシレンは主にテレフタル酸やジメチルテレフタル酸の原料として使用されます。テレフタル酸、ジメチルテレフタル酸はポリエチレンテレフタレート (PET) 、p-トルイル酸の原料になります。
2. o-キシレン
別名で1,2-ジメチルベンゼンとも呼びます。o-キシレンは主に無水フタル酸の原料として使用されます。無水フタル酸はジオクチルフタレート、ジブチルフタレートなどの可塑剤の原料や、ジアリルフタレート、アルキド樹脂、o-フタロジニトリル、キシレノール、キシリジンなどの原料になります。
3. m-キシレン
別名で1,3-ジメチルベンゼンとも呼びます。m-キシレンは主にイソフタル酸の原料として使用されます。これはポリエステルの原料です。その他、メタキシレンジアミン、キシレン樹脂などの原料にもなります。
キシレンの特徴
キシレンは、構造がよく似たトルエンと同様、インク剤のような特有の香りをもつ無色透明の液体です。工業的に量産される場合は、石油の改質油から抽出されており、引火性が高いという特性を持ちます。
また、キシレンは揮発速度も速く気体になったものを吸入することによって神経系に影響をおよぼすことが報告されているため、使用時は注意が必要です。p-キシレン、o-キシレン、m-キシレンの3つの異性体は、外観や臭い、危険性について差はありませんが、分子構造の違いから物性が異なっています。
特に融点は大きな違いがあり、p-キシレンが13.3℃、o-キシレンが-25.2℃、m-キシレンが-47.9℃です。沸点についても融点ほどではありませんが、o-キシレンが144.4℃とp-キシレンが138.4℃、m-キシレンが139.1℃と、o-キシレンが少し高いため蒸留により分離精製することが可能です。
キシレンのその他情報
キシレンの製造方法
工業用の混合キシレンから、p-キシレン、o-キシレン、m-キシレンの3つの異性体とエチルベンゼンを分離する方法は以下の通りです。
1. o-キシレン
混合キシレンから蒸留により回収されます。o-キシレンは混合キシレン中に20%含まれますが、他との沸点差が大きいので、精密蒸留によって分離することが可能です。精密蒸留によりエチルベンゼン、p-キシレンとm-キシレンの混合物、o-キシレンに分離することができます。
2. p-キシレン
混合キシレンからエチルベンゼン、o-キシレンを分離した後のp-キシレンとm-キシレンの混合物を深冷分離法により分離します。両者の沸点差は1℃以内と近接しているため、蒸留による分離は困難ですが、融点が約60℃の差があります。このため深冷により分離が可能です。しかし、超低温まで冷却する必要があるためエネルギー効率が悪い点と、p-キシレンの収率が低いという欠点があります。
3. m-キシレン
混合キシレンからエチルベンゼン、o-キシレンとp-キシレンを除去した残りがm-キシレンですが、p-キシレンの深冷分離法による収率が低いため、純度が低いという問題があります。このためm-キシレンとのみ選択的に反応する付加物を作り回収するという方法が用いられます。回収後の付加物を水素で分解することで純度の高いm-キシレンを回収できます。