マンガン

マンガンとは

マンガンとは、鉄と似た性質を持っている銀白色の金属です。

原子番号25で、鉄よりも硬くて脆いです。パイロルース鉱、菱マンガン鉱、軟マンガン鉱などが主要な鉱石で、生産量は、中国、南アフリカ、オーストラリアが上位となっています。

また、マンガンは、人体に必要な栄養素です。酵素を構成する成分となったり、酵素を活性化したりして、成長や生殖に関与しています。必要な量がわずかで、多くの食品に含まれているため、マンガンの不足はあまりありません。 

マンガンの使用用途

マンガンは、鉄鋼や非鉄金属に対する合金添加剤として利用されることが多いです。マンガンを添加すると、強度、硬度、耐食性などの金属特性が改善されるためです。例えば、船のスクリューには、海水に対する耐食性があるマンガン入り黄銅が使われます。

さらに、マンガンには幅広い酸化数が存在します。酸化状態が変わりやすいため、酸化還元反応の触媒として使用可能です。酸化マンガンは、その強力な酸化力を活用して、乾電池や自動車用リチウムイオン電池などにも利用されています。 

マンガンの性質

マンガンの融点は1,246°C、沸点は2,061°Cです。単体のマンガンは常磁性ですが、ホイスラー合金などの強磁性を持つ合金もあります。さまざまな磁気的性質を有する化合物も存在します。

触媒に二酸化マンガンを用いた過酸化水素の酸素と水への分解反応は、日本の義務教育課程で実験の題材になっており、有名な反応です。空気中でマンガンは、酸化被膜が生じ、内部が保護されて、赤みがかった灰白色になります。粉末状のマンガンは、空気中の酸素や水と反応します。

酸化数は−3〜7を取りますが、+2、+3、+4、+6、+7などの酸化数が安定です。希酸に溶けやすく、淡桃色の2価のマンガンイオンが生じます。

マンガンの構造

マンガンは、元素記号がMnの遷移金属元素です。室温付近での密度は7.21g/cm3、融点での液体密度は5.95g/cm3です。

常温常圧では、体心立方類似構造を取っています。742°C以下で安定している構造はαマンガンで、単位胞あたり原子を58個含んだ複雑な立方晶を形成し、硬くて非常に脆いです。原子の位置によって、異なる4種のスピンを有し、全体で磁気モーメントがない広義の反強磁性体だと考えられています。

742〜1,095°Cで安定しているのは、βマンガンです。単位胞あたり原子を20個含んだ複雑な立方晶で、常磁性体です。γマンガンは、1,095〜1,134°Cで安定しています。面心立方構造を取り、反強磁性体です。1,134〜1,245°Cになると、δマンガンが安定しています。体心立方構造を取っている常磁性体です。

マンガンのその他情報

1. マンガンの同位体

天然で生成する安定同位体は、55Mnだけです。放射性同位体は18種類知られており、最も安定な53Mnの半減期は370万年です。それ以外にも、半減期が312.3日の54Mnや半減期が5.591年の52Mnも存在します。その他の同位体はすべて半減期が3時間以内で、ほとんどは半減期が1分以下です。

同位体の質量数は、46から65までを取っています。質量数が55以下の同位体は電子捕獲などで崩壊し、質量数が55以上の同位体はベータ崩壊などを起こします。

2. マンガンの危険性

マンガン中毒によって、関節痛、頭痛、易刺激性、眠気などを引き起こして、錯乱状態や情動不安定になります。大脳基底核や錐体路にも障害が起こり、パーキンソン症候群や平衡覚障害を起こすだけでなく、抑うつや無関心などの精神症状も知られています。

マンガンは、酸素吸着作用が強いです。そのため、天然のマンガンが多い井戸や洞窟では、内部の空気中の酸素が欠乏している場合があります。十分に換気せずに奥に入ると酸素欠乏症になって、最悪の場合には死亡する可能性もあります。

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