メチルエチルケトン

メチルエチルケトンとは

メチルエチルケトンとは、独特な匂いがある無色透明な液体の有機化学物質です。

別名でエチルメチルケトン、メチルアセトン、2-ブタノンなどがあり、省略してMEKとも呼ばれます。メチルエチルケトンは、毒物劇物取締法で「劇物」として指定されている薬物であり、消防法でも「危険物第1石油類」に分類されているため、取り扱いには注意が必要です。

メチルエチルケトンの使用用途

メチルエチルケトンは溶剤としての用途が多く、樹脂加工溶剤や塗料、接着剤、印刷インキ等の溶剤、潤滑油等の石油精製溶剤、ビニル、アクリル、ポリウレタン、エポキシ等の樹脂用溶剤、硝酸セルロース、およびラッカー用溶剤などとして幅広く使用されています。

揮発性が高く、非常に乾燥が速いことから、自然乾燥型の塗料や接着剤・インクの溶剤としても広く利用されています。その他の用途として、有機合成用原料や工業用洗浄剤、塩ビ表面処理剤、フィルム加工、加硫促進剤などが挙げられます。

メチルエチルケトンの性質

メチルエチルケトンは化学式CH3COC2H5で、分子量72.10、密度0.8047g/cm3 (20℃) 、融点-87℃、沸点80℃のアセトンに近い臭いのある液体です。水に溶けにくいですが、アルコールやエーテルやベンゼン、トルエン等と混和しやすい性質があります。

発火点は514℃ですが、引火点が-7℃と低く、爆発限界が1.7~11.4vol%であることから、低い濃度でも爆発の危険性があります。蒸気は比重が空気よりも重いため、低い場所に溜まりやすくなっています。

塩基によりケトン基の隣の炭素に結合した水素が脱プロトン化し、縮合反応を起こすことがよくあります。

メチルエチルケトンのその他情報

メチルエチルケトンの製造方法

メチルエチルケトンは、2-ブタノールの脱水素反応により合成されます。原料である2-ブタノールの合成方法はn-ブテンからの間接水和法と直接水和法の2つがあります。

間接水和法は、n-ブテンを硫酸エステル化して硫酸に吸収させた後、加水分解する2段階の反応で2-ブタノールを合成します。直接水和法はヘテロポリ酸水溶液を触媒にしてn-ブテンの水和により1段階で2-ブタノールを合成する方法です。以下は、間接水和法によるn-ブテンからメチルエチルケトンを合成する方法です。

1. n-ブテンの硫酸への吸収
n-ブテンとn-ブタンの混合物を硫酸と接触させ硫酸エステル化し、硫酸中にn-ブテンのみを硫酸エステルとして吸収させ、n-ブタンを系外に分離します。

CH3CH2CH = CH2 + H2SO4 → CH2CH2CH(CH3)OSO3H

2. 2-ブタノールの合成
n-ブテンの硫酸エステルに水を加えて分解し、2-ブタノールを合成します。

CH2CH2CH(CH3)OSO3H + H2O → CH2CH2CH(CH3)OH + H2SO4

3. 脱水素反応によるメチルエチルケトンの合成
2-ブタノールをCu-Znを触媒として使用して脱水素させることで、メチルエチルケトンを合成します。

CH2CH2CH(CH3)OH → CH2CH2COCH3 + H2

2. メチルエチルケトンの取扱い上の注意

メチルエチルケトンを吸入すると、吐き気、嘔吐、意識障害などの症状が現れる場合があります。高濃度で吸入すると、呼吸困難、意識不明瞭、心臓麻痺などの重篤な健康被害を引き起こす可能性が高いです。また、メチルエチルケトンに触れると、皮膚刺激、湿疹、かゆみなどの症状が現れることがあります。

メチルエチルケトンは、国際がん研究機関により、グループ2Bに分類され、がんを引き起こす可能性がある物質として指定されています。メチルエチルケトンを扱う場合は、引火性・爆発性に注意が必要です。密閉容器に保管し、換気の良い場所での使用が推奨されます。

また、目や皮膚、呼吸器への被害を防ぐため、適切な防護具の着用が重要です。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/0618.html

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