窒化ホウ素とは
窒化ホウ素 (英: Boron nitride) とは、難燃性の無色の結晶です。
ホウ素と窒素からなる無機化合物で、化学式はBN、分子量は24.82、CAS登録番号は10043-11-5です。炭素と等電子構造を持つことから、性質面でも共通する部分が多くあります。
窒化ホウ素の構造
窒化ホウ素の主な同素体として、六方晶系のh-BN (α-BN)、立方晶系のc-BN (β-BN)、立方晶系ウルツ鉱型のw-BN (γ-BN) の3種類が存在します。
1. 六方晶系 (h-BN)
六方晶系は最も安定な結晶形であり、h-BN、α-BN、g-BN、およびグラファイト窒化ホウ素とも呼ばれます。六方晶窒化ホウ素 (点群=D6h、空間群=P63/mmc) は、グラファイトに似た層状構造を持っています。各層内では、ホウ素原子と窒素原子は強い共有結合によって結合されていますが、層は弱いファンデルワールス力によって一緒に保持されています。
2. 立方晶系 (c-BN)
立方晶系窒化ホウ素は、ダイヤモンドと同様の結晶構造を持ちます。ダイヤモンドがグラファイトよりも安定性が低いように、立方晶は六方晶よりも安定性が低くなります。立方晶は、ダイヤモンドと同じ閃亜鉛鉱結晶構造 (B原子とN原子が秩序ある) を持ち、β-BNまたはc-BNとも呼ばれます。
3. ウルツ鉱型 (w-BN)
ウルツ鉱型の窒化ホウ素 (w-BN、点群=C6v、空間群=P63mc) は、炭素のまれな六方晶多形であるロンズデーライトと同じ構造を持っています。ウルツ鉱型では、ホウ素原子と窒素原子が6員環状にグループ化され、立方晶ではすべての環は椅子型の配置ですが、w-BNでは層間の環はボート型の配置になります。その硬度は46GPaで、市販のホウ化物よりわずかに硬く、立方晶の窒化ホウ素よりも柔らかいです。
窒化ホウ素の性質
1. 物理的特性
真空中では1,500℃、不活性雰囲気では2,200℃付近まで、問題無く使用できるほど高い耐熱性があります。また、熱膨張率が小さく熱伝導率がよいため、熱衝撃性に優れています。そういった特性から、窒化ホウ素の成形体は、鋼に近い熱伝導率を有する高熱伝導性のセラミックスとして利用されています。
2. その他の特徴
その他の特徴としては、無機・有機薬品に対して極めて安定であり、優れた耐食性を示します。また、優れた絶縁体でもあり、高周波用の絶縁材料としても活用されています。
窒化ホウ素の使用用途
窒化ホウ素は、熱伝導性や電気絶縁性に優れていることから、放熱樹脂シートや放熱基板用のフィラーとして幅広く使用されます。
耐熱性や耐食性、潤滑・離型性にも優れた材料であるため、各種マトリックスへの添加材としても使用されています。具体的な用途の例として、各種放熱材料の添加材、グリース、オイル添加材、高温潤滑添加材等が挙げられます。また、各種金属・ガラスの耐熱離型材や溶融金属保護コーティング材等としても使用されております。
感触改良や表面処理を目的として、メイクアップ化粧品や日焼け止め製品等にも、窒化ホウ素が使用されることもあります。
窒化ホウ素のその他情報
1. 窒化ホウ素の製法
ホウ砂とアンモニア、または、ホウ酸もしくはホウ酸塩と塩化アンモニウム、シアン化アルカリ金属を加熱することで、窒化ホウ素が生成されます。窒化ホウ素は、結晶の状態では鱗片状で層に沿って滑りやすく、成形体の状態では剥離性があります。
2. 法規情報
窒化ホウ素は毒物及び劇物取締法や消防法で、特に指定されていません。化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法) では、第1種指定化学物質 (法第2条第2項、施行令第1条別表第1、第1種管理No. 405) に指定されています。
3. 取扱いおよび保管上の注意
取扱い及び保管上の注意は、下記の通りです。
- 容器を密栓し、乾燥した冷暗所に保管する。
- 屋外や換気の良い区域のみで使用する。
- 強酸化剤との接触は避ける。
- 使用時は保護手袋、保護眼鏡を着用する。
- 取扱い後はよく手を洗浄する。
- 皮膚に付着した場合は、石鹸と水で洗い流す。
- 眼に入った場合は、水で数分間注意深く洗う。
参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/jp/product/detail/W01W0102-0228.html