フェニルアラニン

フェニルアラニンとは

フェニルアラニンとは、必須アミノ酸の一種です。

アラニンの側鎖の水素原子の1つがフェニル基に置換されていることから、この名前が付けられました。略号はPheあるいはFと表されます。光学異性体があり、生合成されるのはL体のL-フェニルアラニンです。

フェニルアラニンは、肉類、魚介類、卵、乳製品など様々な食品に含まれています。フェニルアラニンの摂りすぎによる危険性は低いと考えられています。過剰に摂取しすぎると、高血圧や心臓病を引き起こすリスクがあります。

フェニルアラニンを代謝する酵素が十分に分泌されない、フェニルケトン尿症という疾患が存在します。この病気を持った人は、フェニルアラニンが体内に過剰に蓄積してしまう可能性があるため、摂取には注意が必要です。 

フェニルアラニンの使用用途

フェニルアラニンは、人工甘味料であるアスパルテームの原料として利用されます。アスパルテームは、フェニルアラニンとアスパラギン酸から合成されます。顆粒状やシロップ状で利用されたり、清涼飲料水や菓子類、医薬品などに添加されたりします。

また、体内でドーパミンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質の材料として利用されます。これらの物質は、精神を高揚させたり、血圧を上昇させたりする効果を持っています。そのため、うつ病の改善効果などが期待されています。

化粧品としてヘアコンディショニング剤、皮膚コンディショニング剤に使用されます。コンディショニング剤とは皮膚の水分の蒸発を防ぎ、保湿性を与えて皮膚や毛髪を保護するための原料のことです。感触の改善が主な目的なので感触改良剤に近い意味合いです。

フェニルアラニンの性質

フェニルアラニンは白色の結晶で、少量の水には溶けますが、エタノールなどの有機溶媒には溶けにくい特性があります。約283℃で分解融解します。100分の1 水溶液の pHは5.4から6.0の間で、酸性をしめします。

フェニルアラニンは人工甘味料アスパルテームの原料になりますが、それ自体には苦みがあります。光学異性体のD-フェニルアラニンは甘味があります。

フェニルアラニンの構造

フェニルアラニンはベンゼン環を持つアミノ酸です。アラニンの側鎖の水素原子がフェニル基で置き換えられた構造を持っています。実際、フェニルアラニンという名前もこの構造に由来しています。

フェニルアラニンのその他情報

1. フェニルアラニンから生成される物質

アスパルテーム
人工甘味料であるアスパルテームは、フェニルアラニンとアスパラギン酸のジペプチド誘導体です。ジペプチド誘導体は、2つのアミノ酸がアミド結合によって結びついたアミノ酸ポリマーのことです。具体的には、フェニルアラニンのアミノ基がアスパラギン酸のカルボキシル基とアミド結合を形成することで、アスパルテームが生成します。

チロシン
フェニルアラニンは肝臓でチロシンに代謝されます。フェニルアラニンのパラ位にヒドロキシ基が置換された分子はチロシンと呼ばれ、タンパク質中のチロシン残基のリン酸化は生体内の情報伝達機構において非常に重要な役割を果たしています。

また、チロシンへのヒドロキシ化反応を触媒する酵素が欠損することで、フェニルアラニンが正常に代謝できなくなる遺伝病がフェニルケトン尿症です。この病気は幼児期に発症し、低フェニルアラニン食などの治療が必要ですが、現在では新生児の血液検査で早期発見が可能です。

2. フェニルアラニンの生合成

植物や多くの微生物で、糖代謝産物であるプレフェン酸からシキミ酸を経て生合成されます。プレフェン酸が脱炭酸されると同時にヒドロキシ基を失うとフェニルピルビン酸になります。フェニルピルビン酸がアミノ基転移を受け、フェニルアラニンと α-ケトグルタル酸が生成します。

ほとんどの芳香族生体分子合成はこの経路によっており、このシキミ酸経路をもたない哺乳動物では体内で合成することができません。人間はこのシキミ酸経路を持たないので、フェニルアラニンは必須アミノ酸の1つとして分類されます。

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