ジメチルエーテルとは
図1. ジメチルエーテルの構造
ジメチルエーテルは2つのメチル基がエーテル結合した化合物であり、最も単純な構造のエーテル類の一種になります。常温では気体として存在しますが、圧力をかけることで容易に液化します。これはLPガスと似た性質であり、その貯蔵や取り扱いについてもLPガスの技術が応用されています。
ジメチルエーテルの物理化学的諸性質
①名称
和名:ジメチルエーテル
英名:dimethyl ether
英名略称:DME
IUPAC名:methoxymethane
②分子式
C2H6O
③分子量
46.07
④融点
-141.50℃
⑤
沸点
-24.82℃
ジメチルエーテルの特徴と使用用途
①LPガスの代価燃料としての応用
本化合物には、常温で気体であり、圧縮する事で容易に液化し、さらには可燃性を有するという特徴があります。これは、LPガスの主成分であるブタン、プロパンと類似した性質であるため、その代替燃料としての応用が期待されています。現在はスプレー用の噴射剤としての利用が主ですが、LPガスと同じような貯蔵・取り扱いが可能なため、LPガスの代替燃料として、家庭用燃料、発電用燃料、ディーゼル燃料など、幅広い用途への応用が期待されています。
②環境に優しいクリーンエネルギーとしての利用
石油、石炭など現在主流の化石燃料は、燃焼時に窒素酸化物(NOx)を発生させ、不完全燃焼時に煤を生成するため、環境に対する一定の負荷が懸念されています。また、これらの化石燃料は硫黄成分を含むため、燃焼時に硫黄酸化物(SOx)と呼ばれる有害物質を生成する事が知られています。これらの酸化物は、人体に対する悪影響(ぜんそく、気管支炎、呼吸器に対する障害など)に加えて、酸性雨の原因ともなるため、環境に対する負荷も非常に大きいです。そのため、化石燃料に変わる環境に優しい燃料の登場が期待されています。ここで、ジメチルエーテルは、分子内にC-C結合を持たないため煤は発生しません。さらには硫黄原子を持たないためSOxを発生させる危険性もありません。そのため、ジメチルエーテルは化石燃料に変わる次世代のクリーンエネルギーとしての応用が期待されています。
ジメチルエーテルの合成・製造
実験室レベルでは、メタノールを濃硫酸と加熱する事で得られます。工業生産レベルにおいては、リン酸アルミニウム触媒存在下でメタノールを脱水する事で調製します。これらの製造法は間接法と呼ばれており、現在主流の製造方法になります。他にも、天然ガス、石炭、バイオマスなどから一酸化窒素、分子状水素を調製し、そこから直接DMEを合成する方法もあり、これを直接法と呼びます。
ジメチルエーテルの毒性・危険性
人体に対する毒性としては麻酔作用があり、吸引すると軽度の麻痺状態となる事が知られています。物性としての危険性に関しては、可燃性と爆発性を有するため、その保管と使用には充分な注意が必要です。ただし、ジメチルエーテルは、これとよく比較されるLPガスに比べて引火性が低く、爆発限界も2倍程度高いです。そのため、比較的安全な燃料であるといえます。