スチレン

スチレンとは

スチレンとは、組成式C6H5CH=CH2で表される芳香族炭化水素の1つです。

別名として、スチロール、フェニルエチレン、スチロレン、シンナメンなどが挙げられます。引火性および毒性が強く、取り扱いには注意が必要です。

スチレンの使用用途

スチレンは、主に合成樹脂の原料として利用されます。ポリスチレン (PS) を始めとして、ABS樹脂やAS樹脂、不飽和ポリエステルなどの合成樹脂の製造に使用されます。また、スチレンは熱・触媒の存在で容易に重合してポリスチレンとなるため、重合用のモノマーとしても利用可能です。

特にポリスチレン樹脂は、安価で成形加工性が良いことから電器製品の梱包材、台所用品、容器、プラモデル、自動車、家電類の各種部品、食品用トレー等で非常に幅広い用途があります。用途によって、ポリスチレン単体で使用される場合と、発泡ポリスチレン (発泡スチロール) で使用される場合があります。

そのほか、合成ゴムであるスチレンブタジエンゴムやポリスチレン、合成樹脂塗料、FRP等の製造原料としてだけでなく、粘着剤や接着剤、断熱材等の建材、乾性油、ポリエステル樹脂イオン交換樹脂等の製造にも利用されています。

スチレンの性質

芳香性のある無色の液体で、比重は0.9044で水よりも軽く、水に溶解しないため、水に浮きます。引火点32℃、融点-30.63℃、沸点145.2℃、屈折率は1.5439です。アルコールやエーテルに可溶です。

スチレンは、ベンゼンの水素原子の1つがビニル基に置換された構造をしています。ビニル基を持つため、極めて反応性が高く、加熱・光・過酸化物等により容易に重合してポリスチレンを生成し、液体状態から徐々に粘度が高くなり、無色の固体状に変化します。

蒸気密度は3.6で空気より重く、低所に滞留し爆発性混合ガスを作りやすいです。日光などの影響で温度が上がると重合することがあり、火災または爆発の危険性を伴います。そのため、通風の良い冷暗所に保管することが推奨されます。

スチレンのその他情報

1. スチレンの製造方法

脱水素法
原料のエチルベンゼンを高温で脱水素してスチレンを合成する方法です。酸化鉄を主体とした触媒を用いて、550℃以上の減圧下で行います。この反応は可逆反応であるため、エチルベンゼンの酸化により生成する水素を除去することで反応を進行させてスチレンを合成します。

他にも反応で生成する水素を酸化させることで、水素の分圧を下げ、かつ反応熱により系内温度を上昇させることで、反応を進行させてスチレンを合成する方法も行われています。

ハルコン法
アメリカのHalcon International社が開発した合成法であり、エチルベンゼンとプロピレンからスチレンと酸化プロピレンを合成できます。この方法では、エチルベンゼンを空気酸化してエチルベンゼンヒドロペルオキシドとし、2~7 MPa、100~130℃の反応条件下でプロピレンと反応させると、酸化プロピレンとメチルベンジルアルコールを生成します。

さらに、生成したメチルベンジルアルコールを酸化チタン触媒により接触的に脱水することでスチレンが得られます。酸化プロピレンとスチレンの収率が高く、これらの同時合成法として有利な製造方法とされています

2. スチレンの安全性

スチレンは引火性液体であり、自己反応性化学物質であることが報告されています。また、加温や光、酸化剤、酸素および過酸化物の影響下で重合し、火災や爆発の危険を生じることがあるため注意が必要です。

吸入すると有害で、皮膚および眼に刺激を与えることがあります。長期または反復曝露により中枢神経系および肝臓障害を引き起こす可能性があるため、作業環境における許容濃度にも注意が必要です。

環境省の環境リスク初期評価書では、呼吸によってスチレンを取り込んだ場合、健康への影響があることが示唆されています。取扱う際には、保護手袋、不浸透性保護前掛け、保護眼鏡か安全ゴーグル、有機ガス用防毒マスクなどの適切な保護具を用いることを推奨します。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/0151.html

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