グルタチオン

グルタチオンとは

グルタチオンの基本情報

図1. グルタチオンの基本情報

グルタチオン (Glutathione, GSH) とは、グルタミン酸システイングリシンから成るトリペプチドです。

システインのアミノ基と、グルタミン酸の側鎖側のカルボキシ基とがアミド結合を形成していることが特徴として挙げられます。2分子がジスルフィド結合を形成して、酸化型グルタチオン (GSSG) を形成しますが、特に記載のない場合は還元型GSHを指します。また、グルタチオン (還元型) と明記されている場合もあります。

還元型グルタチオンは化学式ではC10H17N3O6Sと表記され、CAS登録番号は、70-18-8です。分子量は307.33、融点は195°Cであり、常温では白色の粉末状固体です。水に溶けやすく、エタノールおよびジエチルエーテルにほとんど溶けません。

グルタチオンの使用用途

グルタチオンは酸化されやすいため、有機合成化学や生化学の分野では還元剤として使用されます。例えば、グルタチオン-アガロースビーズを用いてGST (グルタチオンS-トランスフェラーゼ) 融合タンパク質を溶出するための溶出バッファーに使用されています。

生物においては細胞内における抗酸化物質の一つです。フリーラジカルや過酸化物といった活性酸素種から細胞を保護する補助的な働きをしています。そのため、体内のグルタチオンを補う目的で医薬品として使用されています。内服薬と注射薬の2種類で、薬物中毒、アセトン血性嘔吐症 、金属中毒、妊娠悪阻、妊娠高血圧症候群などの諸症状に対して適応があります。

グルタチオンの原理

グルタチオンの原理を構造と酸化還元反応の観点から解説します。

1. グルタチオンの構造

グルタチオンは、グルタミン酸、システイン、グリシンのペプチド結合に寄って形成されているトリペプチドです。配列はL-γ-glutamyl-L-cysteinyl-glycineと表記されます。すなわち、グルタミン酸とシステインのアミド結合は通常のペプチド結合とは異なり、グルタミン酸側鎖のγ-カルボキシ基とシステイン主鎖のα-アミノ基で結合しています (γ-グルタミル結合) 。

2. グルタチオンの酸化還元反応

グルタチオンの酸化反応

図2. グルタチオンの酸化反応

システイン残基側鎖にチオール基を有し、酸化されると2分子の還元型グルタチオンがジスルフィド結合を形成して酸化型へと変換される分子です。動物細胞では、細胞質性タンパク質中に形成されているあらゆるジスルフィド結合をシステインに還元する働きがあります。

過酸化物や活性酸素種を還元して酸化ストレスを取り除く作用も、同様の還元作用によるものです。これらの反応の際、グルタチオン自身は酸化型へと変換され、ジスルフィド結合の形成が起こります。

3. グルタチオンの生体内における解毒作用

グルタチオンによる毒物の抱合

図3. グルタチオンによる毒物の抱合

グルタチオンはシステイン残基のチオール基の硫黄部位が求核性を有する物質です。生体内ではグルタチオン-S-トランスフェラーゼ (GSTs) の触媒作用を受け、様々な物質に結合します。毒物や抗生物質などの薬物、ロイコトリエンやプロスタグランジン等と結合して抱合体を形成すると、この抱合体は細胞外に取り除かれるため、その結果解毒作用をもたらします。

グルタチオンの種類

グルタチオンは、研究開発用の化学試薬として販売されている他、医薬品としても承認されています。医薬品としては、錠剤や注射用の製剤があります。主な使用用途は、人体における体内のグルタチオンを補ったり、体内の毒物に結合して解毒したりする目的です。

薬物中毒や、アセトン血性嘔吐症、及び、慢性肝疾患における肝機能の低下をはじめとする様々な症状に対して効能が認められています。試薬製品では、10mg , 300mg , 1g , 5g , 10g , 25g , 50g , 100g , 250g , 500gなど、容量には非常に多くの種類の製品があります。

空気中で容易に酸化されて酸化型へ変換されてしまうため、冷蔵保管が必要な試薬です。また、酸化型のグルタチオンも製品として販売されており、混同しないように注意する必要があります。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu/53/6/53_354/_pdf

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