サリチル酸ナトリウム

サリチル酸ナトリウムとは

サリチル酸ナトリウム(Sodium Salicylate)は分子式:C7H5NaO3、分子量:160.10で、サリチル酸にナトリウム塩がついた化合物で、常温では白色の結晶又は結晶性の粉末です。水に極めて溶けやすく、酢酸(100)に溶けやすく、エタノール(95)にやや溶けやすいという特徴があります。

光によって徐々に着色していくため、日光や大気により、また特にアンモニアガスに触れると着色するという特徴があります。

工業的には、ナトリウムフェノキシドと二酸化炭素を高温高圧化で合成させることによって得られます。サリチル酸ソーダとも呼ばれ、加熱によって二酸化酸素を発生させながら分解していきます。

サリチル酸ナトリウムの使用用途

サリチル酸ナトリウムは、古くから抗炎症作用や鎮痛作用を目的とした医薬品として使用されることが多いです。特に手足や関節に起こりやすい症候性神経痛(外傷、圧迫、炎症、感染など原因が明らかな神経痛)に対して適用があります。

その他にも化粧品における変性剤や防腐剤として使用されることもあります。化粧品の場合、サリチル酸ナトリウムを含有できる量が少ないため、大きな問題にはなりません。

ただし、サリチル酸系化合物(アスピリン等)に対し過敏症の既往歴のある方は、喘息などアレルギー症状が再燃する可能性があります。また潰瘍性大腸炎の患者、クローン病の方では症状を悪化させるおそれがあります。

そして、動物実験で催奇形作用、弱い胎仔の動脈管収縮が報告されているため、妊娠している方には胎児に影響が出る可能性があり、投与量を控えた方がよいとされています。

他の薬剤との混和について

サリチル酸ナトリウムは、酸性の溶液中ではサリチル酸を遊離し、中性溶液中では鉄塩と難溶性のサリチル酸鉄を形成して沈殿します。またアルカロイド塩とは難溶性のサリチル酸アルカロイド塩として沈殿することがあります。

アルカリ類、鉄塩、亜硝酸塩と混和すると変色します。炭酸水素アルカリ塩により赤褐色になり、鉄塩により紫色になります。なお、鉄塩による変色では治療効果に変化はないとされています。

水溶液中ではアルカリにより光酸化を受け、着色もしくは沈殿を生じることがありますが、この反応は、鉄、マンガンで触媒され、亜硫酸水素塩やチオ硫酸塩を混和することで防ぐことができます。

医療分野における使用用途について

サリチル酸ナトリウムはシクロオキシゲナーゼを阻害して、アラキドン酸からのプロスタグランジン類やトロンボキサン前駆物質などの合成を低下させることで、鎮痛作用や抗炎症作用を発揮すると考えられていますが、まだ不明な部分があります。しかし、アスピリンと異なり、血小板凝集抑制作用はありません。

抗炎症作用、鎮痛作用の正確な作用機序は不明です。炎症組織においてプロスタグランディンもしくは他の因子の合成を阻害することで、神経インパルス発生が遮断され、効果を示すと考えられています。

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