オレイン酸アミドとは
図1. オレイン酸アミドの基本情報
オレイン酸アミド (英: Oleic acid amide) とは、不飽和脂肪酸であるオレイン酸をアミド化した物質です。
通称「オレアミド (英: Oleamide) 」とも呼ばれています。分子式はC18H35NOで表され、1個のアミド結合と1個の二重結合を含みます。生物においては、このオレイン酸アミドは、オレイン酸とアンモニアの生合成によってオレイン酸から内因的に産生される物質です。
オレイン酸同様睡眠に関連する神経ペプチドと関係があると言われています。合成経路や生合成に必要な酵素は、特定されていない状態で、まだまだ研究が進んでいない物質です。
工業的にも製造され、様々な用途に使用されています。毒性や皮膚感作性は低い固体の物質ですが、目に対する刺激性があることから、目に入った場合には注意深く洗い流す必要があります。
オレイン酸アミドの使用用途
図2. オレイン酸アミドの使用用途
オレイン酸アミドをはじめとする脂肪酸アミドは、親油性の高い長鎖炭化水素基と親水性の高いアミド基を持つため、様々な物質表面において機能を発現します。主な特性としては、上図のようなものがあり、様々な用途へ応用が可能です。
1. 工業的な用途
オレイン酸アミドが多用されるのが、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂に対する滑剤としての用途です。滑剤とは、樹脂のペレットや成型品同士、あるいは樹脂とその加工機の摩擦を低減させる添加剤のことで、流動性・離型性を高め、加工性を向上できます。
ポリエチレンフィルムの場合、一般的に約0.1%~0.5%のオレイン酸アミドの添加で効果が発現します。その他の工業的な用途は、インクの分散剤やワックスの改質剤、金属の曇り止め、さび止め剤、他の化学物質の合成原料などです。
2. 食品・生物的な用途
オレイン酸アミドは、様々な食品に含まれていることが分かっており、その中でも身近な食品としてカマンベールチーズが挙げられます。その他にも生薬として使用されるタイソウなどにも含まれています。
まだ実用化までは進んでいませんが、睡眠やストレスに働きかけることが明らかになっており、睡眠障害やうつ病の治療薬としての応用が検討中です。オレイン酸アミドは、脳内のアミロイドβなどの老廃物を除去する役割を担うミクログリアと呼ばれる細胞を活性化しながら抗炎症活性を示すと考えられています。
その他、オレイン酸アミド自体の使用例は少ないですが、その界面活性剤としての特性を生かし、誘導体が洗浄剤、泡安定剤、浸透剤、湿潤剤、乳化助剤として、シャンプーや化粧品などの原料として用いられます。
オレイン酸アミドの特徴
図3. オレイン酸アミドの製造法
オレイン酸アミドは、工業的にはオレイン酸とアンモニアを触媒存在下で反応させることで製造します。最初にオレイン酸アンモニウムが生成し、それを高圧で脱水することでオレイン酸アミドとする製法です。
触媒としては、ホウ酸、活性アルミナ、シリカゲル、カオリンなどが有効です。反応条件は、温度170~200℃、圧力0.3〜0.7MPa、反応時間は10〜12時間程度で製造されます。
原料のオレイン酸は限定されませんが、動物性のものよりも植物由来のオレイン酸の方が、不純物の違いから臭気の少ないものが製造可能です。その他の製法としては、オレイン酸エステルにアンモニアを反応させる方法があり、この場合では原料として油脂を用いることでグリセリンを回収することができます。
オレイン酸アミドの種類
オレイン酸アミドは、主に研究開発用の試薬製品や、産業用の粉末、フレーク、粒子として販売されています。試薬製品では、25gや500gなどの内容量の試薬瓶で販売されており、実験室で取り扱いやすい大きさです。室温で保管できます。
産業用としては、滑剤用途でプラスチック工場等へ向けて大型の荷姿で販売されています。荷姿には、20kg袋などがあります。
参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/jp/product/detail/W01W0115-0055.html
https://www.kirinholdings.com/jp/newsroom/release/2015/0312_01.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jos1956/15/8/15_8_406/_pdf/-char/ja