オレイン酸とは
オレイン酸とは、一価不飽和脂肪酸に分類される脂肪酸の一種です。
オリーブオイル、ベニバナ油、ナタネ油、またはヒマワリ油といった植物油に多く含まれています。植物油に含まれるオレイン酸は、グリセリンとエステル結合した状態、すなわちトリグリセリド (トリアシルグリセロール) の状態で存在します。
トリグリセリドは、1つのグリセリンに、3つの脂肪酸がエステル結合した物質です。したがって、トリグリセリドを加水分解することによって、オレイン酸を得ることができます。
オレイン酸は分子内に不飽和結合を有するため、ステアリン酸などの飽和脂肪酸よりも酸化しやすい性質を有します。オレイン酸が結合しているトリグリセリドは、不飽和結合の部分で酸化が起こるため、植物油は酸化しやすい性質を有します。
オレイン酸の使用用途
オレイン酸のトリグリセリドは食用油脂として使用されますが、トリグリセリドから得られたオレイン酸は主に工業用原料として使用されます。オレイン酸は、界面活性剤などの原料、印刷インキの配合成分、消泡剤、潤滑油の添加剤、化粧品や医薬品の油性成分といった用途で使用されます。
例えば、オレイン酸を反応前原料として使用し、別の原料と反応させることで界面活性剤などを合成できます。また、オレイン酸を油性成分として化粧品に配合することで、使用感の調整が可能です。さらには、オレイン酸をアルカリ剤で中和することで、せっけんのような機能を持たせることができます。
オレイン酸の特徴
オレイン酸の性質は、分子構造に起因します。炭素数が同じであるにも関わらず、不飽和結合を有しないステアリン酸は室温で固形である一方で、オレイン酸は液状です。オレイン酸は融点が13℃付近であるため、冬季のような低温にならない限りラードのように固まらず、液状のままです。しかし、オレイン酸は分子中に不飽和結合を有するため、比較的酸化されやすいという性質を有します。
また、オレイン酸は分子中にカルボキシ基を有するため、このカルボキシ基をアルカリで中和すると水中で分散することができ、せっけんのような界面活性作用を発揮できます。なお、オレイン酸は、消防法において「危険物第4類第三石油類非水溶性液体」に分類されています。
オレイン酸の構造
オレイン酸の構造 (分子構造) は、動物性油脂の主成分であるステアリン酸、または、植物性油脂に含まれているリノール酸やリノレン酸と類似しています。これらの脂肪酸はすべて、炭素数が18の脂肪酸に属します。オレイン酸を分子構造式で表すと、CH3(CH2)7CH=CH(CH2)7COOHです。
いずれの脂肪酸も炭素数が18のため、疎水性が高く水に溶解しません。また、いずれの脂肪酸もそれぞれカルボキシ基 (-COOH) を分子中に1つ有します。17の炭素がつながった部分が脂肪に相当し、カルボキシ基が酸に相当します。
オレイン酸は、不飽和結合の数および位置の点でステアリン酸やリノール酸と異なります。オレイン酸は分子中に不飽和結合を1つ有する不飽和脂肪酸です。一方、ステアリン酸は分子中に不飽和結合を有しない飽和脂肪酸です。なお、リノール酸は不飽和結合を2つ、リノレン酸は不飽和結合を3つ有します。
オレイン酸のその他情報
オレイン酸の製造方法
なお、オレイン酸などの不飽和脂肪酸を含む植物油は室温において液状です。液状の植物油は、化学反応によって不飽和結合を飽和結合に変えることでマーガリンのような固形油脂に変わります。バターに似た固形油脂を植物油から人工的に作り出すために、水素添加という化学反応が利用されます。
水素添加によって一部のオレイン酸は不飽和結合を有するままシス型からトランス型へ変化し、エライジン酸となります。エライジン酸はオレイン酸と類似しますが、トランス脂肪酸の一種です。トランス脂肪酸は、食品として多量に体内に取り入れられた場合に有害な作用を及ぼすかもしれない物質として研究対象になっています。
オレイン酸自体ではありませんがオレイン酸のトリグリセリドを含む植物油を摂取することにより、身体に良い効果があるといわれています。具体的には、悪玉コレステロールと呼ばれるLDLコレステロールを抑制するといわれています。
参考文献
https://www.kegg.jp/entry/D02315+-ja
https://www.tcichemicals.com/JP/ja/p/O0011