EMC試験とは
EMC試験とは、EMC (Electromagnetic Compatibility:電磁両立性) の性能を確認する試験です。
EMC試験は、EMI試験とEMS試験から構成されてます。EMI試験 (Electromagnetic Interference:電磁障害) は、電子機器等が外部に対して放出する電磁波を測定する試験です。EMI試験では、電子機器等から外部に放出される空間に放射される電磁波のレベルが規格の基準に入っているかを確認しています。
具体的には、電磁波または電源ハーネスや通信ハーネスから伝導によって外部に放出される電磁波を測定します。一方で、EMS (Electromagnetic Susceptibility:電磁感受性) 試験は、電子機器等が外来電磁波を受けた際の耐性を確認する試験です。
EMS試験では、電子機器等に静電気や放射電磁界等の外来ノイズを印可し、電子機器が規格の基準内のノイズを受けても正常動作するかを確認しています。
EMC試験の使用用途
EMC試験は、各国や各地域で規定されたEMC規格や製品群毎に規定されたEMC規格の基準を満たすために行われています。販売前の製品開発の段階で、規格で規定されたEMC試験を実施し、基準適合性を確認するのが目的です。
基準を満たせると、電子機器を世の中に販売できるようになります。
EMC試験の原理
EMC試験は、IEC ( International Electrotechnical Commission:国際電気標準会議)とIECの委員会であるCISPR (International Special Committee on Radio Interference:国際無線障害特別委員会) が定めた国際規格が標準となっています。IECは、EMS試験の規格が中心ですが、CISPRはEMI試験の規格が中心です。
各国、各地域のEMCに関する法規制は、IEC、CISPR規格をベースにしています。米国や欧州では、EMCに関して法規制で厳しく制限しています。日本では、EMCに関する法規制は無く、VCCI等の業界団体が自主規制措置を取っているのが現状です。
EMC試験の種類
1. 放射妨害波エミッション試験
電子機器から放射される電磁波をアンテナを用いて定量化し、測定した値が既定の基準以内であるかを確認する試験です。電波暗室またはオープンサイトで試験を実施し、30MHz以上の周波数を対象として測定します。
2. 伝導妨害波エミッション試験
電子機器の電源線または通信線から伝導放射される電磁波をスペクトラムアナライザを用いて定量化し、測定した値が既定の基準以内であるかを確認する試験です。電波暗室またはシールドルームで試験を実施し、9kHzから30MHz以下の周波数を対象として測定します。
3. 静電気放電イミュニティ試験
静電気が電子機器に印可された場合に、電子機器が正常動作するかを確認する試験です。静電気放電試験器の静電気放電ガンから電子機器に静電気を印可して試験を実施します。
電子機器に、直接静電気を印可する直接放電試験と、電子機器近傍の導体物から静電気が印可する間接放電試験があります。
4. 放射電磁界イミュニティ試験
高周波の電磁波が電子機器に放射された場合に、電子機器が正常動作するかを確認する試験です。電波暗室またはオープンサイトで試験を実施し、試験用のアンテナを用いて、80MHz以上の周波数を電子機器に印可します。
5. 電気的ファスト・トランジェントバーストイミュニティ試験
コイルやインダクタの遮断時に発生する過渡的な異常電圧が発生した場合に、電子機器が正常動作するかを確認する試験です。ノイズの印可箇所は、電子機器の電源線または通信線です。
試験対象が電源線の場合は、電子機器のインレットにノイズを印可します。試験対象が通信線の場合は、電子機器の通信ハーネスをカップリング装置でクランプした上で、通信線にノイズを印可します。
6. サージイミュニティ試験
雷発生時やスイッチのON/OFF時に発生する過渡的な異常電圧が発生した場合に、電子機器が正常動作するかを確認する試験です。ノイズの周期は、トランジェントバーストより長いです。専用の試験器を用いて、電子機器の電源線または通信線にノイズを印可します。