CFRP

CFRPとは

CFRPとは、エポキシ樹脂 (英: Epoxy Resin) やフェノール樹脂 (英: Phenolic Resin) などのプラスチックに炭素繊維を混ぜて強化されたプラスチックの複合材料です。

炭素繊維強化プラスチック (Carbon Fiber Reinforced Plastics) とも呼ばれます。2つの異なる物質が、工具などでは機械的に分解不可能な状態で結合し、異なる物質同士が化学反応を起こして新たな物質に変化していない状態の材料を複合材料と言います。

CFRPは、最新の航空機の機体や自動車の車体などで使用されている複合材料で、炭素繊維とプラスチックの良いところを併せ持っています。炭素繊維は炭素原子同士が強力に結合してできた繊維であり、繊維の網目が揃った方向への引っ張り強度が非常に強いです。プラスチックは金属と比べると比重が小さく、成型が容易な点が利点です。

炭素繊維とプラスチックの両方の利点を併せ持つCFRPは成形しやすく、軽くて丈夫なことを利点として、使用範囲が広がっています。

その一方で、CFRPは2種類の素材からできているため、リサイクルが難しいことが指摘されており、使い終わって回収されたCFRPから炭素繊維とプラスチックを分離して、再利用するための技術開発が進められています。

CFRPの使用用途

CFRPを使用すると、金属よりも非常に軽く、強度に優れた製品や部品を製造できます。この特性を活かして、身の周りにある金属製品の置き換えから使用用途を拡大してきました。

初期の頃は釣り竿、テニスのラケットのフレーム、ゴルフクラブのシャフトなどに使われました。乗り物にCFRPを使用すると重量が軽くなり、燃料の使用量だけでなく運用コストや環境負荷の低減にもつながります。

航空機では機体や翼の一部でCFRPが使用されるようになり、徐々に適用範囲を拡大してきました。ボーイング社の787型機では、翼と胴体の大部分の面積がCFRPで覆われるように作られており、重量比でも機体全体の50%以上がCFRPで占めるようになっています。

自動車では、ボンネットや後部のハッチなど車体の一部に使われている他、プロペラシャフトなどにも使用されており全体の軽量化に貢献しています。特に、軽さがスピードに直結するF1レース用の競技車両のボディは全体がCFRPで作られるようになってきています。

その他、CFRPは宇宙産業や建築業界でも使用される例が増えてきています。

CFRPの原理

CFRPは炭素繊維とプラスチックの複合材料です。炭素繊維は、アクリル繊維などを高温加熱し、炭素 (C) 以外の物質をなくして、炭素原子同士が強固に結びついた繊維です。具体的な製法には、PAN法、炭化物法、レイノルズ法等があります。

PAN 法はポリアクリロニトリル (PAN) を高温で炭化させることで炭素繊維を製造する方法です。炭化物法は、有機物を高温で炭化させることで炭素繊維を製造します。レイノルズ法は、メタノールやエタノールなどのアルコールを原料として、金属触媒を用いて水蒸気を還元して製造します。

生成された炭素繊維には、単繊維、短繊維、織物、不織布のような形状があります。単繊維は、直径が10μm以下の細い繊維で、高強度・高剛性を持ちます。単繊維は、複数本を束ねて使用することが一般的です。短繊維は、長さが数mm程度の繊維で、単繊維よりも扱いやすく成形性に優れています。織物は、単繊維や短繊維を組み合わせて作られる布地で、平面的な形状を持ちます。強度や剛性を向上させるために使用されます。不織布は、単繊維やショートカットファイバーをランダムに配置して作られる布地で、平面的な形状を持ちません。不織布は、成形性に優れており、複雑な形状の部品も作ることができます。

CFRPの選び方

CFRPは細かく分類すると、多種多様な特性の製品が開発されており、任意の形に加工する製法にも違いがあります。何かの製品にCFRPを使用する場合には、加工の委託先を選ぶと共に、その製品の要求する品質、仕様によく合致した素材を選ぶ必要があります。軽さを求めるのは当然として、耐熱性、耐久性、加工のしやすさを考慮する必要があります。

また、多層構造に作られたCFRPは内部で損傷が起きていても見つけにくく、損傷部の部分的な補修がしにくいので、損傷時には部品単位での交換になります。さらにCFRPはリサイクルや廃棄処理がしにくい部材であることなど、欠点もあることを認識しておく必要があります。

CFRPのその他情報

1. CFRPに使用するプラスチック

CFRPに使用するプラスチックにはエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂などがあります。それぞれの樹脂には特徴があり、エポキシ樹脂は高強度・高剛性を持ち、フェノール樹脂は高い耐熱性を持ち、ポリアミド樹脂は耐衝撃性や耐摩耗性に優れていて、ポリエステル樹脂は耐候性や耐水性に優れています。

炭素繊維とプラスチックからCFRPを製造する手法はいつくかあります。一般的には炭素繊維を切断し、炭素繊維の表面処理を行い、炭素繊維に樹脂を染み込ませ、炭素繊維と樹脂を何層も重ねて積層体を作り、真空引きをして積層体に入った空気を抜いてから、積層体を加圧・加熱し成形します。

炭素繊維を何枚も重ねながら樹脂で固めることで、軽くて強固な部材が完成します。この際、炭素繊維の並ぶ方向が一方向になると、横方向に引っ張る力で破断してしまうので、炭素繊維の向きを変えながら重ねて行く工法がとられています。これらはAFP (英: Automated Fiber Placement) 法、ATL (英: Automatic Tape Layup) 法などと呼ばれる高度な製造方法であり、これらの工法で使用する製造装置や製造技術の発展が、CFRPの適用範囲の拡大に貢献しています。

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