MEMS非接触温度センサー

MEMS非接触温度センサーとは

MEMS(Micro Electro Mechanical System)は、機械要素部品、センサー、アクチュエータ、電子回路などを1つの基板上に搭載した超小型システムで、半導体の微細加工技術を応用して製造されます。LSIが平面上に電子回路を集積するのに対し、MEMSは電子回路に加えて機械的機構をウエーハ上に立体的に積み上げて立体形状や可動構造を形成します。

MEMS非接触温度センサーは、このMEMS技術を応用した温度センサーです。測定対象物からの放射熱エネルギーをサーモパイル素子で受けて、対象物の表面温度を非接触で測定することができます。

MEMS非接触温度センサーの使用用途

MEMS非接触温度センサーは、対象物に触れることなく表面温度を計測することができることから、変圧器や配電盤の異常温度モニタリング、省エネ家電の温度検知、人感センサーなどのセキュリティ機器、入室管理時の発熱者スクリーニングなどに使用されます。

また、MEMS非接触温度センサーはMEMSの特徴を活かして小型化で低消費電力化を実現しており、HEMS(Home Energy Management System)、BEMS(Building Energy Management System)、FEMS(Factory Energy Management System)など幅広い分野で、エネルギー削減、設備の最適制御などの用途に使われています。

MEMS非接触温度センサーの原理

代表的なMEMS非接触温度センサーは、小型の基板上にシリコンレンズ、サーモパイル素子、信号変換用のICなどを搭載した構成をしています。

対象物が発している遠赤外線は、シリコンレンズによってサーモパイル素子上に集光され、サーモパイル素子は、ゼーベック効果を利用して遠赤外線の入射エネルギー量に比例した熱起電力を発生します。

ゼーベック効果は、物質の両端に温度差を与えると、両端間に起電力が生じる効果です。

物質の片側を加熱するとキャリア(電子または正孔)が発生しますが、冷却されている側ではキャリアはほとんど発生しません。そのためキャリアの密度バランスが崩れ、熱接点側から冷接点側にキャリアが流れますが、やがてキャリアの移動は収束します。

熱接点側ではキャリアが流れた後、反対側の電荷を持つため、熱接点・冷接点間の電位差が生じます。この電位差は熱接点と冷接点の温度差に比例しており、遠赤外線の入射エネルギーに比例します。

MEMS非接触温度センサーによっては、サーモパイル素子で発生した電位差をA/D変換してビット値として出力するものもあれば、ビット値をさらに補完演算して温度データとして出力するものもあります。

参考文献
https://www.hitachi-hightech.com/jp/products/device/semiconductor/noteworthy.html
https://www.omron.co.jp/ecb/product-detail?partNumber=D6T
https://omronfs.omron.com/ja_JP/ecb/products/pdf/CDSC-019/pdf

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