HIDランプとは
HIDランプ (英: High Intensity Discharge lamp) とは、高輝度放電ランプのことです。
白熱灯と比べて、高輝度、低消費電力であり、長寿命である特徴があります。ガラス管内に希ガスと金属原子の蒸気を封入し、アーク放電を起こすことで発光させます。金属原子のガスに応じて、水銀ランプや高圧ナトリウムランプ、メタルハライドランプなどがあります。
点灯直後は青白から白色に発光し、十数秒ほどかけて発光の色味が安定していくという特徴があります。
HIDランプの使用用途
HIDランプは、高輝度の可視光を必要とする街灯や体育館、倉庫、スタジアム、植物育成室などで照明を必要とする場面で使用されます。明るく遠くまで照らすことができることから車のヘッドライトにも取り入れられており、高速道路や山道などの暗い道路での走行時の安全性が高める時に有用です。
車のライトに用いられる場合には、キセノンライト、ディスチャージランプとも呼ばれます。広告や看板を目立たせるためのライトアップにも用いられています。
可視光の照明だけでなく、紫外光を取り出すことで、紫外線照射用のランプとして使用されることもあり、紫外線による殺菌や洗浄、表面改質などに応用が可能です。
HIDランプの原理
HIDランプは、高圧の電気エネルギーを使って、ガス中でアーク放電を起こすことで光を発します。発光管にガスを封入し、内部で放電を発生させると、ガスの種類や電圧など条件に応じて様々な発光を生じます。
発光管の材料としてはセラミックや石英ガラスなどが使用されます。発光管の内部には2枚の対向電極が設置され、電極に電流を流すことで電極が加熱されます。このとき、電極表面から熱電子が放出されます。電子は対向電極に向かい、発光管内に封入された金属原子と衝突し可視光を放出します。
HIDランプの場合、蛍光ランプの場合と比べて封入された金属ガスの蒸気圧と温度が高いため、より多くの光を放出し高輝度化を実現しています。HIDランプの中で最も効率が高いのが高圧ナトリウムランプで、メタルハライドランプ、水銀ランプの順です。高圧ナトリウムランプはオレンジがかった白色光、メタルハライドランプや水銀ランプは白色系の発光を示します。
バラスト (安定器) と呼ばれる装置で交流電源を直流に変換し、安定した電圧を出力しアーク放電を維持します。また、イグナイタと呼ばれる高圧電源装置により、ランプ内部のガスを昇圧してアーク放電を起こします。このように、HIDランプは専用の制御回路を備え、安定した電源や制御によって高輝度かつ安定した光を維持できます。
HIDランプの種類
HIDランプには、先にも述べたように、水銀ランプ、高圧ナトリウムランプ、メタルハライドランプなどがあります。それぞれの特徴や用途を紹介します。
1. 水銀ランプ
水銀ランプは、白熱灯よりも明るく、さらに長寿命であり、高輝度を実現できるために、街灯や大型施設の照明などに多く使用されています。また、水銀ランプは、そのスペクトルが非常に狭く、一定の波長の光を放出するため、蛍光物質などの発光材料を励起するのに適しています。
2. 高圧ナトリウムランプ
高圧ナトリウムランプは、オレンジがかった白色光を放射するのが特徴で、主に屋外用途に使用されます。高圧ナトリウムランプは、比較的高い効率で光を発生し、特に白色光の発生に優れています。
3. メタルハライドランプ
メタルハライドランプは、高輝度であることと、光の再現性が高いことが特徴です。発光管には、数種類の金属ハライドを使用し、様々な色温度や色相を表現できます。また、メタルハライドランプは、水銀ランプに比べて光量が多く、高圧ナトリウムランプに比べて色温度が高く、植物の育成用照明としても使用されます。
参考文献
https://www.bulbs.com/learning/hid.aspx
https://www.sphere-light.com/article/topics/228
https://electric-facilities.jp/denki3/hid.html
https://www.jlma.or.jp/tisiki/pdf/guide_hid.pdf