ピペットとは
ピペット (英: pipette) とは、目的の量の液体を吸い取ったり、それを容器などにうつしかえる際に用いられる実験器具のことです。
化学や生物学などの自然科学分野から、医学や薬学などの応用科学分野まで幅広く利用されています。ピペットには複数の種類があり、使用目的によって使い分けられます。使用されている素材は、主にガラス製とプラスチック製の2種類です。
ガラス製ピペットは耐薬品性や耐熱性に優れているため、洗浄や乾熱滅菌による再利用が可能です。プラスチック製ピペットは耐薬品性や耐熱性においてガラス製よりも劣りますが、安価な上ディスポーザブルなので洗浄の手間を省き、コンタミを防ぐことができます。
ピペットの類似製品に、スポイトがあります。スポイトはプラスチック製で一定量を吸い込むのに対して、ピペットは製品に応じてプラスチック製やガラス製など種類は様々です。中には、取り付けるアタッチメントや設定次第で吸い込む量を調節できるものもあります。
ピペットの使用用途
ピペットの使用用途は主に以下の2種類に分けられます。
- 液体を計量したい (液体分取)
- 液体を別の容器に移し替えたい (液体移動)
なお、目的によって使われるピペットが異なります。そのため、用途を考慮した上で選定する必要があります。
ピペットの原理
マイクロピペットは、大きく分けて「チップホルダー」「グリップ」「プッシュボタン」「液量設定ダイヤル」から構成されます。
液量設定ダイヤルを操作することで吸い込む量が調節され、プッシュボタンによって内部のピストンを動かして空気の量を変化させ、それによって液体を吸引、吐出する仕組み (エアーディスプレイスメント方式) です。内部にはO-リングという円形のゴムがあり、気密性を保ったまま内部のピストンを動かすことができます。
また、内部にはバネもあり、押したプッシュボタンはバネの力によって自動で戻ろうとするため、液体の吸引および吐出が可能となります。
ピペットの種類
ピペットには様々な種類があり、適切な選定が大切です。また、種類によって使い方も異なります。
1. 液体分取用のピペット
ホールピペット
ホールピペットは、液体を正確に計量するための器具です。ガラス管の中央あたりが膨らんでおり、上部に目盛線が引かれています。精巧に作られており、非常に高い精度で液体を計量できます。
ピペット先端を液体につけて、ストローで吸い込むように液体をガラス管の中に入れ、目盛線の少し上まで吸い上げ、口を離した瞬間にガラス管上部を指で押さえることで計量します。ただし、現在では吸い込み時に危険な試薬を誤飲するのを防ぐため、上部にゴム製の安全ピペッターやオートピペッターを取り付け、液体を吸引・吐出することが多いです。
メスピペット
メスピペットも、正確に液体を計量できる器具です。ガラス製やプラスチック製のものがあり、ピペット全体に目盛りがついています。ホールピペットと同様、上部にゴム製の安全ピペッターやオートピペッターを取り付け、液体を吸引・吐出します。
マイクロピペット
マイクロピペットは、液体をμL単位で計量できる器具です。使用方法としては、まず、液量を設定するダイヤルを回し、吸い取りたい量の数値に合わせます。次に、グリップを利き手で握って、親指を上部のプッシュボタンに置きます。
チップホルダーの先端に適した大きさのチップを取り付け、しっかりはめます。そして、プッシュボタンを押し、液体の吸引および吐出を行います。最後に、プッシュボタンの近くにあるイジェクターボタンを押し、チップを取り外すという流れです。
2. 液体移動用のピペット
駒込ピペット
駒込ピペットは、液体を別の容器に移動させたい場合に使用します。スポイトに似た形状をしていますが、薬品に用いることを考えて耐薬品性の高いガラスなどの素材でできていることが多いです。ゴム球を上部に取り付け、液体を吸引・吐出します。
パスツールピペット
パスツールピペットは、液体を吸い込む先端部分が細長いガラス製のピペットです。パスツールピペットには目盛りがないため、少量の液体を移動させるために使用されることが多く、基本的に使い捨てで使用します。駒込ピペットと同様、ゴム球を上部に取り付け、液体を吸引・吐出します。
参考文献
https://axel.as-1.co.jp/contents/t_tb/li_glass
https://nippongene-analysis.com/special-feature/sp004/