ニッケル水素電池

ニッケル水素電池とは

ニッケル水素電池

ニッケル水素電池とは充放電が可能な二次電池の一種で、負極に水素吸蔵合金、正極に水酸化ニッケルを用いた製品です。

同じく正極にニッケルを用いているニカド電池と比較して カドミウムの代わりに水素吸蔵合金を用いているため高価ですが、 大電流を用いた充放電が可能で、単位質量あたりの電池容量も大きいことが特長です。

また、他の充電池と比較してメモリー効果 (完全に放電せず継ぎ足し充電を繰り返すと、放電中に電圧の降下が起こる効果) が比較的小さいことも特長で、 性能を劣化させることなく繰り返し使用することが可能です。

ニッケル水素電池の使用用途

ニッケル水素電池はその高性能、高寿命を活かす形での利用がされており、高い出力や信頼性が求められる自動車向けのバッテリーやノートパソコン、乾電池等に利用されています。

近年ではメモリー効果や自己放電が存在せず、より単位質量あたりの電池容量が大きく作動電圧も高いリチウムイオン電池が利用されるようになりましたが、 入出力特性に優れることや製造コストの面から両者は併用され続けています。

ニッケル水素電池の原理

1. ニッケル水素電池の構成

ニッケル水素電池は電極 (正極:オキシ水酸化ニッケル、負極:水素吸蔵合金) 及びオレフィン系不織布等のセパレータ電解液としての水酸化カリウム水溶液で構成されています。 乾電池の場合、これらを捲回した構造体を缶の中に納めています。

2. ニッケル水素電池の充放電反応

図1にニッケル水素電池の化学反応式を示します。ニッケル水素電池の放電時、正極では水の存在下でオキシ水酸化ニッケルが電子を受け取り、水酸化ニッケルと水酸化物イオンを生成します。負極では水酸化物イオンの存在下で水素吸蔵合金から水素イオンと電子が放出されて水が生成されます。

放電時は逆方向に反応が進行し、正極では水酸化物イオンが水酸化ニッケルと反応してオキシ水酸化ニッケルを生成し、電子を放出します。負極では電子を供給することによって水素が吸着されます。

ニッケル水素電池の充放電反応式

図1. ニッケル水素電池の充放電反応式

ニッケル水素電池の充放電は、水素を吸蔵して水を生じるという単純な反応によって起こるものです。 例えば、自動車のバッテリーに用いられる鉛蓄電池は、電極の析出溶解反応で充放電を行うため充放電を繰り返すと電極の劣化が避けられません。ニッケル水素電池はそのような劣化モードはないため、 電極そのものが劣化しない限りは半永久的に使用できることから寿命の長い電池と言えます。

3. ニッケル水素電池の電極

負極の水素吸蔵合金に関しては、かつて高容量を実現するためCo合金が主に使用されてきましたが、 主にコスト面の観点からCoレスの動きが進んできました。研究開発が進みCoレスでも高容量な水素吸蔵合金が開発されてきています。 また正極に関しては、充電状態のオキシ水酸化ニッケルは導電性が高いものの、放電状態の水酸化ニッケルは絶縁体であるため、放電時に電子パスのパス切れなどの問題が生じます。このため導電性付与のためにオキシ水酸化コバルトなどが付加されています。

ニッケル水素電池のその他情報

ニッケル水素電池の特徴

1. 電池特性
ニッケル水素電池の公称電圧は1.2Vとなっておりニカド電池と同じです。これは充放電に利用している反応が同様であるためです。 鉛蓄電池の公称電圧は2.0V、リチウムイオン電池の定格電圧が3.7Vであるため、比較的電圧の小さい電池と言えます。大電流を流しやすい電池であるため、ハイブリッドカーなど出力が求められる機器に搭載されています。

ニッケル水素電池には、メモリー効果 (継ぎ足し充電を繰り返し行うと電池の電圧が降下し、利用できる容量が減少する効果。図2参照) や不活性化 (長時間使用しないと、充放電反応が起こりにくくなること) などのデメリットも持っているため、 使用する際は電池の特性を理解して利用することで、電池の寿命を最大限引き出すことができます。

メモリー効果

図2. メモリー効果

2. 安全性
基本的に電池の爆発・火災事故は、ショートなどで生じた火種が電解液の溶媒である有機溶媒に引火することで生じます。

図3に示すように、ニッケル水素電池の電解液の溶媒は水であるため万が一火種が発生しても引火することはありません。 そのため、電流・電圧の制御機構をリチウムイオン電池ほど厳密に設計する必要がなく、製造コストを引き下げることができます。このコストの小ささが今もなおニッケル水素電池が産業界で多く使われている理由の一つです。

リチウムイオン電池とニッケル水素電池の比較

図3. リチウムイオン電池とニッケル水素電池の比較

3. 環境負荷
リチウムイオン電池や鉛蓄電池、ニカド電池は環境負荷の高い有害物質を含みますが (例:ニカド電池に含まれるカドミウムは四代公害病の一つであるイタイイタイ病の原因物質) 、 ニッケル水素電池の構成部材の環境負荷はこれらの蓄電池よりも小さく、電解液も有機溶媒を用いていないため環境に優しい蓄電池と言えます。

参考文献
https://www.neomag.jp/mailmagazines/topics/letter201301.html
https://www.fdk.co.jp/battery/nimh/
https://jeea.or.jp/course/contents/09106/
https://www.khi.co.jp/energy/battery_energy/faq/
https://wajo-holdings.jp/media/2237#01-03

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