ネオジム磁石

ネオジム磁石とは

ネオジム磁石は希土類磁石に分類される磁石で、主原料がネオジム、鉄、ホウ素(ボロン)で構成される永久磁石です。1982年に住友特殊金属の佐川眞人氏によって発明されました。主相はNd2Fe14Bです(Nd:ネオジム、Fe:鉄、B:ホウ素)。市場に流通している永久磁石の中では最も強い磁力を持っています。その磁力はフェライト磁石の6~10倍程度にも達します。

ネオジム磁石の原料であるネオジムは、希土類(レアアース)の中では比較的豊富にあるとされ、希土類磁石の中ではコスト的に安価です。ひと昔前は産業用に使用されていましたが、最近では100円ショップでも購入が可能で一般家庭でも使われます。

ネオジム磁石の使用用途

小さなサイズで大きな磁力を得ることができるネオジム磁石は多くの場面で使用されています。モーター、ソレノイドなどの動力源に使用する磁石にネオジム磁石が使用されており、小型化に貢献しています。また、スピーカーの磁気回路にもネオジム磁石は使用されることがあり、こちらも小型化に一役買っています。

携帯・スマホにはスピーカーが内蔵されていますし、着信のバイブレーションにはモーターが使われています。こういった機器が小型化しているのも、小型で磁力の強いネオジム磁石が使われているためです。

電気自動車のモーターにもネオジム磁石を利用したモーターが使われています。車輪速センサー、エンジン回転センサー、イグニッションコイル(エンジン点火用高電圧発生装置)、スピードメーター、タコメーターなど、自動車の様々なところで活躍しています。

一般家庭では、マグネットで保持するタイプのフック部品などに使用されており、小さくても重たいものを保持することが可能です。これらのように、製品の小型化、高性能化が求められている分野で多く使われています。

ネオジム磁石の特徴

群を抜いて磁力が強いことがネオジム磁石の特徴です。フェライト磁石と比較すると6倍以上の磁力を有し、いくつか種類がある希土類磁石の中でも最も優れていると言えます。

ネオジム磁石の機械的強度は比較的強く、割れや欠けに対しては強いです。そして熱に対しては他の磁石と比較すると弱い特性を示します。熱による減磁が大きく、磁石が磁力を失うキュリー温度は300℃前後です。ただし、添加剤としてテルビウムやディスプロシウムなどを加えることで温度特性の良いネオジム磁石もつくられています。また、結晶粒を微細化させることで、添加剤が少量(あるいはゼロ)でも温度特性の良いネオジム磁石がつくられるようになっています。ネオジム磁石の実用上の耐熱温度は60~80℃程ですが、上記のような加工をした耐熱ネオジム磁石では200℃程度まで使用できるものもあります。

ネオジム磁石のもう一つの特徴として、さびやすいという特性が有ります。表面がさびると磁力が低下するため、通常はニッケルめっきなどのコーティングが施されています。

ネオジム磁石の取り扱い上の注意

磁力の強さゆえに周囲への影響を考慮する必要があります。磁気カードや精密機器に対してネオジム磁石を近づけた場合、データが破損するなどの悪影響を与える可能性があります。

また、複数のネオジム磁石を使用するときには、磁石同士が互いに強力な磁力で引き合うため、指の皮膚を挟まれたりしないよう注意しなければなりません。くっついた磁石を取り外す際は、むやみに引っ張るのではなく平行にスライドさせるようにすると、比較的弱い力で安全に取り外すことができます。また、強度が高いとはいえ、勢いよく吸着したときの衝撃で欠けたり割れたりすることがあります。

ネオジム磁石の取り外し

図1. ネオジム磁石の取り外し

ネオジム磁石はさびやすいので、めっきをしてあっても、水分が付着しているなどの条件下では錆が進行することがあるため、注意が必要です。

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