フッ素ゴムとは
フッ素ゴムとは、耐熱性、耐油性、耐炎性、耐候性、耐薬品性に優れたゴムです。
これらの物性は、他の合成ゴムと比較すると群を抜いています。主なフッ素ゴムの略号はFKMで、これはFluoro (フッ素性の)、Kautschuk (ドイツ語でゴムの意)、Mグループ (ゴムの分類に係る略号:Mはポリメチレンタイプの飽和主鎖を持つゴム) の頭文字をとって表されています。
フッ素ゴムは重合が非常に難しいこともあり、高価なゴムですが様々な面において高い耐久性を有するため、過酷な環境で使用される場合が多いです。
フッ素ゴムの使用用途
フッ素ゴムは、特殊な環境下で優れた特性を発揮します。特性を活かした使用用途は、以下の通りです。
1. 自動車分野
自動車関連では、ガソリンの蒸散性にも対応可能であることから燃料ホースとして使われています。また、耐熱性、耐油性などの特性より、自動車内部の機器密封用のオイルシールやガスケットとしても使用されています。
2. 半導体製造装置
各種化学薬品に対する耐性が必要であるため、フッ素ゴムが使われています。
3. 航空・宇宙の分野
腐食性の高い燃料を用いていることや、耐油性、耐熱性、耐候性が必要であることから、フッ素ゴムが使用されています。
4. 食品や医療分野
高い耐酸性を活かして内視鏡の部材などに使用されています。
フッ素ゴムの特徴
フッ素ゴムの特徴は、前述したように、耐熱性、耐油性、耐炎性、耐候性、耐薬品性が抜きんでて優れている点です。フッ素原子はあらゆる元素と結合しやすいですが、特に炭素原子との結合であるC-F結合は結合エネルギーが高く、電気的にも安定であり、これがフッ素ゴムの高い耐久性の源にもなっています。
一方で、ゴムの弾性や加工性は他の合成ゴムに劣っています。
フッ素ゴムの種類
フッ素ゴムにはいくつかの種類があります。主な種類は、フッ化ビニリデン系ゴム (FKM) 、四フッ化エチレン-プロピレン系ゴム (FEPM) 、四フッ化エチレン-パーフルオロメチルビニルエーテル系ゴム (FFKM) の4つです。
これらの中でフッ化ビニリデン系フッ素ゴム (FKM) は、前述の各種物性と加工性、価格などのバランスがとれており、最も市場に流通しています。よって一般的にフッ素ゴムと呼ぶ場合、フッ化ビニリデン系ゴム (FKM) のことを指しています。
なお、フッ化ビニリデン系ゴム (FKM) はさらに以下の3種類に分類できます。
1. 2元系フッ素ゴム
2元系フッ素ゴムは、フッ化ビニリデン (VDF) と6フッ化プロピレン (HFP) の共重合体です。市場のフッ素ゴムの内、約80%を2元系フッ素ゴムが占めています。
HFPの方が分子中に含まれるフッ素の割合が大きいため、ポリマー中に含むHFPの割合が大きくなればなるほど、ポリマー中に含まれるフッ素の割合も大きくなります。
フッ素の割合が大きくなると、耐熱性や耐油性が向上する一方で、耐寒性が低下します。現在取引されている2元系フッ素ゴムのほとんどは、物性のバランスが良いとされるフッ素濃度66%になるよう設計されています。
2. 3元系フッ素ゴム
上記2種のモノマーに加えて、4フッ化エチレン (TFE) も共重合した共重合体です。機械的強度や化学的特性、耐薬品性などほとんどの特性において2元系フッ素ゴムより優れていますが、より高価です。
3. 低温タイプフッ素ゴム
耐寒フッ素ゴムとも呼ばれます。3元系フッ素ゴムのHFPの代わりにパーフルオロメチルビニルエーテル (PMVE) が原料として用いられています。耐寒性が高く、低温におけるシール性などに優れているため、自動車の各種シール材などに用いられています。
参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/gomu/89/1/89_16/_pdf/-char/en
https://www.mitsufuku.co.jp/products/how-to-fkm/
https://www.mitsufuku.co.jp/products/how-to-fkm/