CMP

CMPとは

CMPとは、主にLSIやMEMSの分野で基板として使用される半導体ウエハーを精密に研磨するために使用する技術や工程の名前です。

CMP (英: Chemical Mechanical Polishing) は化学的機械研磨の意味で、LSI (英: Large Scale Integration) は大規模集積回路、MEMS (英: Micro Electro Mechanical Systems) は微小電気機械システムを意味します。

一般に金属板や刃などの表面の凸凹を平らにする作業を研磨と言いますが、最先端レベルでナノメーター (nm) 単位の微細加工を行うLSIやMEMSの世界では、研磨に求められる基板の平滑度も同様に非常に微小なレベルになっています。

CMPはいくつか存在する研磨方式の1つですが、研磨剤に薬品を含ませて研磨パッドの上に垂らし、化学的処理を行いながら機械的に基板の表面を磨くことにより、基板の表面をオングストローム単位 (1A=0.1nm) まで平滑にすることが可能と言われています。

このような高精度の研磨を達成するためには、研磨装置や研磨パッド、研磨剤などそれぞれの要素技術において、高度な技術やノウハウが必要とされ、最先端の微細加工技術として技術開発が継続されています。

CMPの使用用途

CMPは半導体デバイスの製造工程において、Siウエハーなどの基板を精密に研磨するために用いられています。

半導体デバイスの他にはMEMS用の基板、ディスプレイのガラス基板、ハードディスク記憶装置のハードディスクドライブ (HDD) 、太陽電池の製造工程などでも使用されています。

また、近年ではセラミクスや、新世代パワーデバイス用の基板として使われ始めているSiC、GaNといった材料への適用も進んでいます。CMPは従来の研磨技術よりも精度が高く、平坦な表面を生成することができます。そのため高性能な半導体チップやディスプレイの製造に不可欠な技術となっています。

CMPの原理

CMPは研磨装置の上に基板を乗せて研磨を行う工程ですが、研磨装置で使用する研磨剤、化学薬品、研磨パッドの3つの要素を組み合わせて基板の表面を高精度に磨き上げます。

1. 研磨剤

研磨剤は、スラリーと呼ばれる砥粒を研磨液に分散させた液状または泥状の状態になっています。研磨剤の種類は、研磨する基板の素材や仕上がりの精度によって異なります。一般的にはセリア系やコロイダルシリカ系などがあります。

2. 化学薬品

化学薬品には研磨剤の作用を助け、研磨面を平滑にする役割があります。化学薬品には酸化剤、還元剤、添加剤などが含まれます。このうち酸化剤は研磨剤と反応して、基板の表面を酸化させます。還元剤は酸化剤の反応を抑制し、基板の表面を保護します。添加剤は研磨剤の作用を助け、研磨面を平滑にします。また、スラリーを構成する水や、アルコールなどの溶媒も化学薬品に含める場合もあります。

3. 研磨パッド

研磨パッドは水平に置かれた円形のテーブルの上に貼られています。このテーブルと研磨パッドの大きさは研磨対象の基板 (円形を想定) の直径よりも大きな半径を持っています。研磨の際には、研磨パッドの上にスラリーを流しながら上方より研磨する基板を研磨面を下側にしてパッド上の外辺近くに押し当て、研磨パッドを装着したテーブルと基板の両方を互いに逆方向に回転させます。

すなわち、大きな円盤 (研磨パッド) の上で小さな円盤 (被研磨基板) が回転し、この両者の回転運動と研磨剤、化学薬品の働きにより研磨が進行して行きます。

研磨が終了した後には基板は洗浄工程に進み、研磨剤や化学薬品が洗い落とされます。洗浄が終了した基板は検査工程に送られ、検査では研磨面の平坦度や粗さを測定します。

CMPの選び方

CMPは半導体デバイスやその他の製造において、重要な工程の1つです。CMPは自社の工場内に自前の設備を揃えてラインを構築する場合と、CMPを受託している会社に業務委託する場合の2通りがあります。

1. 自社のラインに構築する

CMPを自社のラインに構築する場合には、装置の選定、プロセス設計、保守体制の構築、エンジニアの育成を行う必要があります。装置には様々な種類があり、それぞれに特徴があります。そのため自社の用途に合ったものを選定する必要があります。

CMP装置は精密機器であるため、定期的な保守ができる体制を整える必要があります。装置の操作や工程の管理は専門的な知識と技術が必要であるため、CMP技術者を育成する必要があります。

2. 受託している会社に業務委託する

CMPを受託する会社には、作業の受託にとどまらずCMP装置や研磨剤の開発、プロセス開発などを統括的に行っている会社もあります。CMPを他社に委託する場合には、自社ラインの構築で記述した内容と同じような検討をした上で選択することが大切です。

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