ダイシング

ダイシングとは

ダイシングとは、半導体製造の工程においてはフォトリソグラフィー工程を終えて、パターン形成が完了したSiウエハーなどを、1個ずつのチップ毎に切断してゆく作業や工程と、それに関連した技術のことです。

チップやウエハーのサイズに依存しますが、1枚のウエハー上には数十個から数万個のチップがパターン化されており、各々のチップの境界はスクライブラインという境界線で区切られています。そのラインに沿ってダイサーまたはダイシング装置と呼ばれる装置を使って正確に切断します。

ダイシングに求められる切断の精度は非常に高く、概ね100μm以下のスクライブラインに沿って、ウエハーを正確に切断する必要があります。ダイサーには主にダイシングソーと言われる極薄の円形の刃を高速で回転させてウエハーを切断する装置と、レーザーダイサーというレーザー光を使ってウエハーを局所的に加熱しながら熱応力で切断する装置があります。

ダイシングは、半導体ウエハー以外にもMEMS (英: Micro Electro Mechanical Systems, 微小電気機械システム) やセラミックス部品等の電子部品や、ガラスや樹脂などの製造工程にも存在します。ダイシングは高精度な加工精度を要求される工程であり、ダイシングの受託事業としている会社もあります。

ダイシングの使用用途

ダイシングは半導体製造業界で一般的に行われるプロセスです。半導体ウェハーから個々のチップ (ダイ) を切り出すために使用されます。半導体ウエハーのダイシングでは、シリコン (Si) ウエハーを始め、シリコンカーバイド (SiC) 、窒化ガリウム (GaN) 等の異なった機械的特性をもつウエハーが切断の対象となります。

精密電子部品関連では、MEMSやファインセラミックス、LED、ダイオード、光学部品。各種センサーの切り出しが行われています。

また、広義のダイシングはそれ以外の様々な産業にも存在します。例えば、品や医薬品などのパッケージング業界でも、ダイシングが行われます。ダイカット機は、包装材料 (紙、プラスチック、金属など) を必要な形状やサイズに切り抜くために使用されます。

他には自動車部品の製造において内装部品やガスケットなど、異なる形状の部品を大量生産する際にダイシングが使用されます。テキスタイル業界では、布地やレザーなどの材料を特定の形状に切り抜くためにダイシングが利用されます。

ダイシングの原理

ここからは、半導体ウエハーのダイシングに焦点を絞って説明します。MEMSや高精度っ電子部品のダイシングについては共通する部分はありますが、食品、医薬品、自動車部品、衣料品のダイシングとは異なることが多いのであまり参考になりません。

半導体ウエハーのダイシングには高度な加工精度が要求されます。この加工精度は、カットライン精度とチッピング幅という2つで定義されます。

  • カットライン精度: ダイシングの切断位置のずれを表すもので、一般的には±3μm程度が要求されます。
  • チッピング幅: ダイシングの切断面に発生する欠けや割れを表すもので、一般的には10μm以下が要求されます。

これらの要求精度を満たすダイシング装置には、ダイサーとレーザーダイサーと言われる二つのタイプが存在します。

1. ダイサー

ダイサーは極薄の円形の刃 (ダイシングソー) を高速回転させてウエハーを切断します。刃先にはダイアモンドが一般的に使用されています。また、ダイアモンドに代えてセラミック・ビトリファイド・ナイロン (CBN) やポリ・クリスタル・ダイヤモンド (PCD) を使用する場合もあります。ダイサーは高速でウエハーを切断できるのが特徴です。

ダイサーでウエハーを切断する際には、ウエハーの質を担保するために純水を流しながら行う場合があります。

2. レーザーダイサー

レーザーダイサーとは、レーザーを用いてウエハーを切断する装置です。レーザーダイサーにはアブレーション加工とステルスダイシングTM加工の2種類があります。

アブレーション加工は、レーザーをウエハー表面に照射して固体を昇華・蒸発させる方法です。ステルスダイシングTM加工は、レーザーをウエハー内部に集光して改質層を形成し、テープエキスパンドなどでチップ分割する方法です。

レーザーダイシングは完全ドライプロセスで行われるため、水や洗浄液を必要とせず、環境負荷を低減できるのが利点です。

ダイシングの選び方

ダイシングは、自社内で行う場合もありますが、外部に委託することも一般的に行われています。

自社工場内にダイシング工程を設置する場合には、ダイシング装置を選択することになります。その際には、加工対象の素材や形状に対応できるか、加工精度や品質、加工速度とコストなどを考慮して選択します。

一方、ダイシングを外部の会社に委託する際には、加工対象の素材や形状に対応できるか、加工方法や品質管理が適切か、納期や価格が合理的かなどを検討しながら委託先を選定することをお薦めします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です